〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
────光秀さん、大好きです
二人で歩けることが、
こんなに幸せだとは思わなかった。
誰かのために何かしたいと、
そんな心からの熱情が──……
『愛』という名だと、初めて知った。
一緒に寄り添えて、嬉しいです。
温かい貴方を知ることができて、
私は本当に……幸せです。
貴方と恋仲になった記念日は、貴方を喜ばせて、もっと幸せを感じて欲しいなぁ。
そう思った私は光秀さんに何かサプライズを用意しようと、こっそり内緒で準備を始めた。
そうして心を馳せながら二日が過ぎ。
ようやく二人だけで過ごせる、逢瀬の日になって。
それは恋仲になって丸々一年目の、ちょうどその当日だったのだ。
*****
「あ、見てください!湯気が上がっていますよ!」
「本当だな、もう近い」
私が指差す方向に、白い湯煙が上がっている。
光秀さんは私を背中から抱えるようにして馬を操りながら、穏やかな口調で言った。
私と光秀さんはその日、天然温泉が湧き出る、ある村へと馬で向かっていた。
なんでも光秀さんが遠出の時に見つけて…
私をいつか連れて行きたいと思っていてくれてたらしい。
私も光秀さんと温泉なんて初めてだから。
さっきから顔がにやけっぱなしで、頬が緩むのが止められない。
「先ほどから随分嬉しそうだな、美依」
すると、光秀さんは後ろから私の顔を器用に覗き込み、不敵に口角を上げた。
そしてそのまま、意地悪そうに…
私をからかうような口調で言葉を紡いできた。
「俺と一緒に温泉に入るのがそんなに楽しみか。案外、お前は大胆な小娘だったんだな」
「へ?!なんで一緒に入るって事になってるんですか?!」
「むしろこの状況で一緒に入らない方が不思議だが?」
「だだ、だめですよ!恥ずかしすぎます!」
私が焦って反論すれば、さらに意地悪な顔つきで、くすくすと笑う。
これは絶対、私の反応を見て楽しんでる!
そりゃ、一緒に入れたら楽しいだろうけど…
一緒に入ったものなら、絶対タダでは済まされない。
そんな予感がして、私は首をぶんぶんと横に振った。