〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
「随分と冷えているな…どのくらい待っていたんだ?」
「えぇと…雪が降り始める前、からです」
「ならもう、一刻は経っているだろう。風邪を引いたらどうするんだ…ほら、中に入るぞ」
光秀さんは私の頭に淡く積もった雪を払い、ふわりと肩を抱く。
ああ、温かいなぁ。
この人に寄り添っていると、芯からポカポカとしてくるみたいだよ。
私は光秀さんに肩を抱かれた状態で、御殿の中に入りながら、当初の目的を思い出し……
光秀さんを見上げながら、おずおずとその話題を切り出した。
「あの、光秀さん」
「どうした」
「しばらくお休みとかはないんですか?」
「何故そのような事を聞く?」
「え、えぇと……」
(……やっぱり、わがままな気がする)
少し寂しいから、二人の記念日を一緒に過ごしてくれませんか…なんて。
そんな事を言ったら、光秀さんは困るんじゃないかな。
寂しいなんて、私の勝手な感情で、光秀さんのせいではないから。
それに例えば休みがあっても……
疲れているだろうし、一人でゆっくり休みたいかもしれない。
しかも恋仲になった記念日、なんて。
光秀さんが覚えるかも解らない。
私が思わず口ごもって俯くと……
ふっとくぐもった笑いが聞こえて。
その直後、やんわり顎を掬われ、また視線が絡み合った。
「二、三日待てるか」
「え……?」
「報告書を書いたり処理をしなければならない事がある、だからすぐには休めないが…その後は時間が取れる」
「本当ですか?」
「ああ」
光秀さんの言葉に、無条件に心が跳ねる。
やっと光秀さんと一緒に過ごせるんだ。
そう思ったら、なんだかすごく嬉しくて、私は思わず笑みを漏らした。
すると、光秀さんが可笑しそうに吹き出し……
そのまま顔を近づけ、私の唇を啄んだ。
「……っ光秀さん」
「本当に解りやすいな、お前は」
「ご、ごめんなさい……」
「何故謝る?そこが可愛らしくていいんだろう」
そう言って、くすくす笑う。
なんだかその笑みが優しくて……
ああ、この人はこんな柔らかい笑みも、私に見せてくれるようになったんだと。
改めてそれを実感し、凍えるほど寒い日なのに、まるで陽だまりに照らされたように心が温かくなった。