〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第96章 桔梗色の恋情と雪の華❀明智光秀❀
(光秀さん、遅いなぁ……)
小雪が舞う中、かじかむ手に息をかける。
私は御殿の玄関で、光秀さんを待ちながら…
空を見上げ、空から舞う粉雪に向かって、はぁっ…と溜め息を一つついた。
光秀さんは、今日もお仕事である。
何日か前にお城で姿を見て以来……
その姿を今日まで見る事はなかった。
また他国に仕事で出向いたのは知っている。
そして、今日帰ると文が届いたから。
だからこうして帰りを待っているのだけど。
でも、今日はただ出迎えるだけではなく、ちゃんと光秀さんと話したい理由がある。
それはね。
もうすぐ、私と光秀さんの記念日だからだ。
それは何かと言うと──……
私と光秀さんが恋仲になって、一年目の。
────とても色濃い、
宝物みたいな日々だったな
光秀さんと想いが通じて、まだ一年。
自分の信念を掲げ、自分を大切にしない光秀さんと、想いが通じるまでは本当に長い道のりだった。
でも──……
あの人はずっと傍にいてくれたから。
たくさん泣かされてきたけど……
その涙を拭ってくれたのもあの人だった。
それでも、光秀さんの生き方は変わらない。
相変わらず織田軍の影を歩くあの人が、こうやって安土を何日も留守にする事は、当たり前のように続いていて。
それが少し寂しいのも変わらない。
だからこそ……
二人の記念日くらい、二人で過ごしたいなぁなんて。
(そんな事言うのはわがままかなぁ)
「……あ!」
その時。
離れた場所の角から、その見慣れた愛しい人が姿を現した。
その姿を確認し、私は思わず大声で名前を呼んで両手で大きく手を振る。
すると、その人は俯いた顔を上げたかと思ったら、驚いたようにその琥珀色の瞳を見開き……
少し足早で私の元へとやって来た。
「美依…この寒空の下で待っていたのか?」
「はい、早く会いたかったので。おかえりなさい、光秀さん!」
「ああ、ただいま」
光秀さんは優しく目元を緩めると、両手で私の両頬を包み込んだ。
少し冷たい指先。
それでも今は私の方が冷たいのか、その指が温かく感じられ……
光秀さんもそれを感じたのか、今度は少し憮然な顔をして、私にゆっくり問いかけた。