〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第95章 花盗人と籠の白百合《後編》❀伊達政宗❀
「俺はうるさくしてないぞ、家康。秀吉が勝手にうるさいだけだ」
「お前が俺の話を聞かないからだろ」
「聞いてるぞ、すぐに抜けるけどな」
「きちんと頭に止めとけ!」
「はいはい、うるさいですよ、秀吉さん。政宗さん、美依が呼んでましたよ」
家康はゲンナリと言ったようにため息をつくと、俺にその無愛想顔を向けながら、そう言った。
美依が俺を呼んでる。
それは早く行ってやらなきゃ、俺も早く会いたいし。
そう思って、思わず頬が緩むと……
すかさず秀吉から、またうるさい小言が飛んできた。
「いいか、節度を守れよ?美依はまだ御館様のものなんだからな?」
「はいはい、守る努力はする」
「努力だけじゃなく、きちんと守れ!」
「ああもう、本当にうるさい。政宗さん、さっさと行ってください」
「あとは任せた、家康。悪いな」
何やらうるさい秀吉と、それをなだめる家康をその場に残し、俺は足取りも軽く美依の元へと向かった。
美依の状況も、あれからだいぶ変わって。
離れの部屋じゃなくなったのもあるし、人との面会も許されている。
たまに城内で美依を見かけると、いつも武将達や女中達に囲まれ、屈託のない笑顔で笑っているし……
あいつにも、本当の意味で自由が訪れたのだと。
それを思えば、俺のやった事にも全て意味があったかな…なんて、そんな風に思う。
泥棒をやっていたのも、あの日美依を外に連れ出したのもだ。
(まぁ、ちょっと可愛がられすぎだけどな)
秀吉を始め、安土の武将達は本当に美依に甘い。
全員構いたくて仕方ないって感じだ。
まぁ、それでも美依は渡さないけれど。
────いつかは、かっさらう
美依を本当に俺のものにしたいから
「美依、来たぞ…って、ん?」
俺が美依の部屋を訪れると、美依は手に小さな風呂敷包みを持って立っていた。
そして、俺の姿を見た途端、花がほころぶように笑って……
俺に小走りで近づくと、にこにこと満面の笑みを浮かべながら鈴を転がすような声で言葉を紡いだ。