〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第95章 花盗人と籠の白百合《後編》❀伊達政宗❀
「惚れてる女ほど、自由にしてやるべきじゃねぇのか。籠の鳥にして、振り向くまで自由を奪うなんて…そんな風に力でねじ伏せれば、美依の心は死んじまう」
届け、心に突き刺され。
これは俺の利己的な考えなのは、承知の上だ。
それでも、解って欲しいと願う。
頭の良いあんただから、余計に。
────惚れた女を、死なせるな
「人間らしく、自由を与えてやれ。自分の幸せを考えられるように、自分らしく生きられるように。美依はもっと可愛く笑える、泣き顔なんて本当は見たくないだろ?本当の意味であんたから美依を奪わせろ、俺の恋敵と認めてやる。美依を奪い合うなら……そこからだ」
「……」
俺の話を、信長は静かに聞いていた。
やがて、ふっとくぐもった息を吐いて……
なんだか、意味深に口角を上げてみせた。
「俺は美依が笑った所など、見た事がない。貴様はそれを見た事があるのだな、政宗」
「……そうだな」
「ならば、俺も美依の笑顔が見たくなった」
すると、信長は懐に手を入れ、小さな鍵を取り出すと、美依に近づき首輪をその鍵を使って外した。
そして、手首の紐も解いてやり……
信長は美依の襟元を優しく直してやりながら、なんだが穏やかな顔つきで美依に言った。
「貴様の好きにするがいい、美依」
「信長様……」
「だが、政宗と共に行けとは俺は言えん。傍に居てほしいと、それは願ってしまう。貴様を愛しているからな」
「……っ」
美依は目を見開き、泣きそうな顔で信長を見つめ。
それを見て、俺は思った。
やり方が間違っていただけで、信長が美依を心底愛している事なんて…最初から解っていた事だ。
そして、美依もそれは感じていたのだろう。
気持ちには応えないから籠の鳥でいる。
その美依の姿勢は、美依なりに信長の気持ちへの返し方だったのかもしれない。
だって、離れには見張りもいない。
逃げようと思えば……
自分から逃げられる環境にあったのだから。