〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第95章 花盗人と籠の白百合《後編》❀伊達政宗❀
「信長、今まで城に入り込んで、献上品を盗んでいた"独眼竜"は俺だ」
「何……?」
「独眼竜として盗みを働いていたのには理由がある、それは…あんたの力量を測るためだ、信長様。奥州伊達家の当主として、国をより良く栄えさせるために、同盟を組む相手を探していた。俺の本当の名前は伊達政宗、奥州をまとめる大名だ」
俺が言うと、信長は目を見開いて俺を見た。
それは、美依も同じだったのだろう。
瞳を零れんばかりに大きく開いて、俺の方を見ている。
「最近怒涛の勢いで奥州をまとめ上げ、名を馳せてきた伊達家の当主か、貴様」
「そうだ。天下布武を目指す信長様を知り…付いていい相手か、確かめる必要があった。そーゆー意味では…あんたは合格だ」
盗みを繰り返しながら…掴んだ信長の情報。
非道な一面がありながらも、家来達は信長に絶大なる信頼を置き、付き従っていること。
そして……
安土に暮らす民達も、信長に絶対的な信用を置いている。
誰もが信長が天下布武を成すと信じて疑わない。
それは本当に有能な将である証だ。
そんな意味から……
信長と組む事は、奥州のためにも利があると感じた。
「盗んだ献上品は、俺が保管してる。売ったりしたら足がつくからな、あんた自身を見定めてから返す予定だったから安心しろ」
「……」
「だが…合格なのは領主としてのあんただ。たった一つ、好きな女の扱いに関しては…俺はあんたに意義を唱えたい」
美依にチラリと視線を移せば……
その囚われの首輪や、痛々しく束ねられた手首が目に入る。
そして、そのまま犯されそうになって、乱れた着物も。
愛する女をこんな状態にするなんて……
間違ってると、俺はそう思うから。
「俺は盗みに入った時、たまたま美依に出会した。それから俺は美依の元を何度か訪れて……境遇があまりに不憫に思ったから、外に連れ出した。美依を抱いたのは、俺が我慢出来なかったからだ。こいつに…馬鹿みたいに惚れちまったから」
「……っ」
「俺はこいつの考えを知って、やるせなくなったぞ。こいつは一生鳥籠にいる覚悟だった、自分らしく生きようなんて…これっぽっちも考えていない」
俺は、真っ直ぐに信長を見据えた。
そして…俺の思いを、真摯に伝える。