〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第95章 花盗人と籠の白百合《後編》❀伊達政宗❀
「ほう…丸腰で来たのではないようだ。しかも、なかなかに反射神経も良い…どこかの武家の者か、貴様」
「信長、俺はあんたと話し合いに来たんだ」
「俺は貴様と話す事などない」
「……っ」
信長がどんどん刃先に力を掛ける。
物凄い気迫だ、それに…殺意も。
俺が憎いか、美依を汚した俺が許せないか。
それは当たり前だろう。
大事に守ってきた白い花を、俺が盗んだのだから。
だがな、やっぱり俺は思うぞ。
いくら寵愛しているからって、閉じ込めて全てを遮断するなんて。
そして、己のものにならないからと……
繋いで縛って、囚われの身にするなんて。
────そんなのは本当の愛とは違うと
「……信長」
「……」
「美依が怖がってるぞ、大事な女なんだろ?」
「……」
俺が言うと、信長はチラリと美依の方を見た。
美依は顔を真っ青にさせ、泣きそうな顔で俺達を見ていて……
その顔を見たからか、瞬間的に信長の力が緩んだ。
俺はそれを見逃さず、すかさず信長の刃を弾き返し、すばやく切っ先を喉元に突き付ける。
「……っ、政宗、だめ……!」
「殺しはしない、大丈夫だ、美依」
「貴様っ……」
「いいからちょっと話を聞けよ、信長"様"」
今にも喉を切りそうな距離を保ったまま、俺は信長に向かって言葉を紡いだ。
すると……
信長は面白くなさそうな顔をしながらも、ため息を一つついて、その刀を鞘へと仕舞う。
俺もそれに習い、突きつけた切っ先をゆっくり離して、腰の鞘へと刀を戻した。
「話とはなんだ、簡潔に話せ」
「……」
「くだらぬ話なら、即座に斬る」
淡々と言葉を放つ、信長。
俺は一回美依を見て……
小さく頷くと、再度信長をしっかり見据えた。
安土城の城主、信長。
第六天魔王と呼ばれ、非道な者して噂は聞いていたけれど……
それが、どんな男なのか。
興味ある半分、怖い部分もある。
だが俺が『判断』したことは、きっと間違っていない。
俺はふっと一つため息をつき…
今までの行動、これからの考え。
それらを全て白日の下に晒した。