〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第94章 花盗人と籠の白百合《中編》❀伊達政宗❀
「政宗、まさ、むね……」
「そうだ、美依」
「政宗、私……」
「……」
「私っ……」
その瞳は、俺に何かを訴えるようで。
切なさを孕んで、きらきらと光っていた。
ああ、綺麗だな。
この星屑の夜空より、何倍も。
(そうか……やっと気づいた)
あの日、宝物を探して入った離れ。
俺は宝物は見つからなかったと思ったけど……
ちゃんと、あったんだな。
こんなに純粋で綺麗な宝物が。
どんなものより煌り光る宝石が。
それは無垢で穢れの知らない、
────真っ白な、お前
「美依……」
「……っ」
その瞼にそっと口づけると、美依は小さく息を飲んだ。
そして、腰から背中に手を這わせれば……
途端に身を固くし、強張らせる。
本当に可愛いやつ。
今夜は知ら世界に飛び込んだのだから。
もっと『違う世界』も。
見てみたいと思わないか、美依?
「美依、折角外に出られたんだろ?」
「う、うん……」
「なら…もう一つ、教えてやる」
「なに、を……?」
「それは、な?」
身体を引き寄せ、首筋に顔を埋めて。
その白い肌に、きつく吸い付いた。
ほんのり赤くなった、その痕は。
俺が美依を染める、始めの一歩。
お前を鮮やかに染めたいって言う……
俺の艶やかな我が儘。
「────眠れない、甘い夜」
ああ、俺は本当に大馬鹿者だよ。
美依の気持ちを確かめてないのに……
こんな情欲に駆られているのだから。
でも──……
今夜しか、時間がない。
案外コイツは頑固なのだろう。
きっと俺が誘い出しても……
美依は二度と、外には出てこない。
それが解るから。
コイツが自ら逃げようとしない限り。
『籠の鳥』である状態は続くのだと。
信長の物で居続けるのだと。
それなら尚、今夜のうちに。
残したい、俺を
美依の中に、
それがえげつない欲望でも
惚れちまったから
どうしようもないくらい、お前に──……
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