〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第94章 花盗人と籠の白百合《中編》❀伊達政宗❀
(────美依、俺、お前の事)
それは気づいてはいけない気持ちだった。
ただ可愛くて、外を見せてやりたいと……
その親切心だけで終わってしまえば良かったのに。
お前が、あんまり可愛く笑うから。
それなのに、切なそうな顔もするから。
惹かれる、
惹かれてしまう、
純で白いお前に、
────鮮やかに色づく想いを
知って欲しいと、切に願ってしまう
「んっ、んんっ……」
「美依……」
「ぁっ……んんっ!」
少し唇を離し、名前を呼んで、また塞ぐ。
唇の隙間から舌を差し入れ、絡め取って……
吐息まで奪って、深く混ざり合う。
訳わかんなくなるほど、感じてほしい。
思いも、何もかも。
これが、初めての口づけならば……
もう、俺以外触れさせるな、誰にも。
「ふ…はぁっ、はぁっ……」
「美依……」
ゆっくり唇を離せば、美依は息を止めていたのか、空気を取り入れるように荒く息を繰り返した。
口づけの仕方も解らない。
そんな無垢なお前が…愛しい。
そんな愛しさは自覚してしまえば、いくらでも湧き上がってきて。
俺は美依の身体を地面に押し付け、上から見下ろしながら、切れそうな思いを口にする。
「お前だって幸せになる権利はある」
「独眼竜……」
「自由を望んだっていいんだ。人間として生まれたなら、人間らしく自分らしく……生きていい権利は誰にでもある」
「…どくが」
「違う」
美依の唇に人差し指を当てて塞いで。
俺は『独眼竜』だけど『独眼竜』じゃない。
少なくとも、お前の前では。
俺は…泥棒の独眼竜ではいたくない。
美依、
俺の名を、呼べ
「────政宗、だ」
驚くような表情をする美依。
口づけのせいで、頬が紅潮して。
潤んだ瞳には……
夜空と同じ星が瞬いているようで。
その可愛い唇が俺の名を紡ぐのを待つ。
しばしの静寂の後──……
美依はぽつりと。
呟くように『政宗』と、
震える声で呼んだ。