〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第94章 花盗人と籠の白百合《中編》❀伊達政宗❀
「ほら、貴方も横になって」
「気持ち良さそうだな、それ」
「気持ち良いよー、早く早く!」
美依に誘われるがまま、隣に寝転べば、視界に入った空がやたらと明るかった。
真ん丸な満月と、無数の星達と。
月明かりだけでこんなに明るいんだなぁと少し驚いていると……
美依がぽつりと。
柔らかな声色で俺に言った。
「独眼竜、ありがとう。私を連れ出してくれて」
「……ああ」
「私、今夜の事、一生忘れないよ」
「美依……」
「一生の思い出にする」
美依の顔を見てみれば、切なそうに笑って、空を見上げていた。
その顔が、とても痛々しくて。
なんだか見ていられなくなって……
気がつけば、その身体を掻き抱いていた。
俺の腕の中にすっぽり収まる、華奢すぎる身体。
なんだかそれが無性に愛しくて……
俺は美依の耳元で、自然に甘い声で囁いていた。
「……また、こうすればいいだろ?」
「……」
「また連れ出してやるから……な?」
「ううん、今夜だけでいいの」
「どうして」
俺が問いかけると、美依は俺の胸元から顔を上げて……
寂しそうに、にっこり微笑む。
そして、その辛すぎる『理由』を。
たった一言で言い切った。
「私は、希望や夢は抱いてはいけないの」
(───………っっ)
それは、全てを諦めた……
『籠の鳥』としての言葉。
信長の想いには応えない。
だから、一生このままだと。
『それ以外』の答えはないと。
そう信じきっている言葉だった。
希望や夢を抱いても叶わないから。
叶わない事を願うと辛いから…
だから美依は捨てたのだ。
自分の人生を、
自分が幸せになる道を──……
「そんな事、言うな……!」
俺は美依をぎゅっと抱き締め……
そのまま、唇を奪った。
美依はびっくりしたように目を開き。
逃げるように腕の中でもがいたけれど……
その動きすら封じ込め、深く深く唇を重ねる。
初めて触れ合った唇、それは柔く温かく、ほんのり紅の味がして……
俺の感情の蓋を、一気にこじ開けた。