〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第94章 花盗人と籠の白百合《中編》❀伊達政宗❀
さっき、蓋をした
淡く、芽吹いた、感情の名は?
俺の言葉に……
頬を染めて俯く美依に気の利いた言葉も出ず、俺は『ほら、飯食え』としか言えなかった。
揺らぐ心を見せないようにするのに必死で…
美味いはずの飯が、味すら感じられなかった。
微かに『自覚』してしまった感情。
それは禁断の思い。
先に進むなと自制した理由。
それが……崩れそうになっている。
(さすがに、駄目だろ、それは)
信長の女、籠の鳥の美依。
純粋すぎる可憐な女で、笑顔が可愛くて。
惹かれているのは解っていたけど──……
────まさか、こんな
馬鹿みたいに燃ゆる感情に気づくなんて
「わぁ〜〜月が明るい!」
その後、俺達は城下外れにある花畑へと赴いた。
蜂蜜色の満月が輝く中……
赤や黄色、橙、淡青など色とりどりの野花が咲き乱れ、それは幻想的な一枚絵のようだ。
そんな中、美依が楽しそうに小走りで駆けていく。
俺は後ろからゆっくり歩きながら……
若干苦笑して、美依の後を追った。
「独眼竜も早く〜〜!」
「ははっ、そんなにはしゃぐと転ぶぞ?」
「だって綺麗なんだもん!こんなの、絵巻の中の世界みたい…!」
美依が小さな身体で背伸びをし、空に向かって両手を広げる。
まるで星が落ちてくるのを待ってるようで…
そのはしゃぎ様は、同じ年頃の女よりも随分幼い。
(本当に何も知らないんだな、美依)
そうさせられていた状況を考えると胸が痛いけれど……
美依はまた、あの世界に帰る。
独りぼっちで閉じ込められている部屋に。
今はただ、かりそめの自由なのだから。
『籠の鳥』は『籠の鳥』。
あの信長のものには違いないのだ。
「美依?」
俺が美依に追いつくと、美依は身体を倒して、野花の中に寝転がった。
そして、ふふっと笑いながら俺を見上げ……
自分の真横をぽんぽんと叩いてみせる。