〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第94章 花盗人と籠の白百合《中編》❀伊達政宗❀
「ぷっ…美依」
「うん?」
「飯、ついてるぞ?」
俺が机を挟んで向かいにいる美依に手を伸ばし、口の端を指で拭うと、美依は顔を真っ赤にさせた。
そして、ごしごしと口を手の甲で拭う。
あーあ、可愛いな。
そう思えば、さらに可愛い顔も見たくなって……
俺は顔を近づけ、ちゅっと頬を唇で掠めた。
さすれば、目を見開いた美依が、慌てて頬に手を当てる。
案の定、びっくりしたような照れたような。
愛らしい表情になったので、俺は満足した。
「ん、いい顔」
「あ、貴方さぁ……」
「どうした?」
「なんですぐに口づけるの?」
美依が少し口を尖らせ、拗ねたように言う。
そんなの、愚問だな。
可愛いと思ったものに触れて、何が悪い?
俺はふっと小さく息を漏らし……
美依の真ん丸な瞳を覗き込みながら、当たり前の説明をしてやった。
「言っただろ?俺はしたい時に口づけはする主義なんだ」
「うー…」
「お前が可愛いと思ったから口づけた。悪いか?」
「……みんなに、そうしてるの?」
「……そうだな、それに答えるなら」
くすっと笑い、美依の頬に指で触れ。
指の背で、優しく頬を撫でる。
その滑らかな感触は、俺の心の柔い部分を刺激するようで……
自然に漏れた言葉は、優しく。
どこか甘やかな響きになった。
「"みんな"を可愛く思える訳じゃないって事だ」
(あれ……?)
自分で言っておきながら、自分の言葉に少し驚く。
俺は確かに今まで、触れたいと思ったものには、躊躇わず触れてきたけれど……
それはただ『好ましいから』と言う理由だったからかもしれない。
美依に触れるのはどちらかと言うと。
『愛しくて仕方ない』
そんな湧き出る感情からと言うか……
『好ましいから』とは少し違うような。
────ちょっと待て
愛しくて仕方ないなんて……
それってなんか、特定の感情を表さないか?
確かに美依は可愛い。
笑顔が可愛いし、性格も可愛いし。
でも、それだけだろう?
こんな、
まるで、
(まさか、俺───………)