〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第94章 花盗人と籠の白百合《中編》❀伊達政宗❀
「書簡を読んでる理由は?」
「ほら、絵巻とかを読むとわくわくするでしょう?本当に自分がその主人公になったみたいで」
「……なるほどなぁ」
「それしか知識を付ける術がないから。まぁ、この書簡も家康が貸してくれたものなんだけどね」
「家康?」
「信長様の同盟相手。とってもいい人なの」
(……なるほど、信長様の同盟相手ねぇ)
とりあえずその話はちょっと置いといて。
俺は胡座に頬杖をつくと、少し考えるように俯いた。
信長の寵愛を受ける美依。
何不自由はないけれど、籠の鳥で。
そして…それはほぼ一生確定的。
信長はこうすれば、美依が自分の方を向くと思っているのかもしれないが。
この美依の様子を見ていれば解る。
コイツは一生籠の鳥でいる覚悟なのだと。
「……それもなんか不憫だな」
「え?」
「いや…お前はそれでいいのか?」
「……信長様を好きになれないから仕方ないよ。それに、こうして貴方とお茶出来るだけで、私は充分だよ」
「……」
痛々しそうに美依が笑う。
こんな笑顔……駄目だろ。
こいつはもっと、可愛く笑える。
目をきらっきらさせて、好奇心いっぱいの可愛い笑顔で。
きっと、それを信長は知らない。
俺を茶に誘った時の、あんな無邪気な笑顔をきっと。
(────よし)
その時、俺の腹が決まった。
コイツと出会ったのも、何かの縁だから。
そして──……
妙にこいつには惹かれるから。
もっと、笑わせてやりたい。
心の底から、思いっきり。
そして、世界の楽しい事……
コイツにも知ってもらいたい
「美依、明日また来てやるから。お前、きちんと化粧しとけ」
「え?」
「そのままでも可愛いが身だしなみだ。ああ、そこに掛かってる着物も着とけ、着付方は解るか?」
「解るけど、でもっ……」
「貰ったもんなんだろ?なら、もうお前のもんなんだから、好きにすればいい。きっとすげぇ似合う」
「……っ」
「その後は、俺に任せろ」
頬杖から身を起こし、美依の華奢すぎる肩に触れた。
そして、それをそっと引き寄せ……
額に『約束の証』の口づけを落とした。