〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第92章 君が傍にいるだけで《後編》❀織田信長❀
「月は綺麗だが寒いな、部屋に戻るか」
「ふふっ、そうですね」
「今宵は久しぶりに共に寝るか」
「えっ……いいんですか?」
「ああ、これからは貴様と六花と寝食も共にする」
「ありがとうございますっ……」
「貴様の具合が良くなったら、また月見をしよう。ああ、暖かくなれば花見でも良いかもしれん」
「そうですね、頑張って元気にならなきゃ」
「その意気だ」
────貴様が傍にいるだけで
俺は全てが満たされる思いがする
貴様と六花
この世で出会った、重すぎる命の存在
どんな困難からも守ってやるから
だから──……
そのままの温かい命でいてほしい
その夜、ひとつの布団で三人身を寄せ合いながら、俺達は穏やかな眠りについた。
次の日、女中には驚かれるのだけれど。
その優しい空間をずっとずっと守ってやりたい。
これが俺の新たな使命なのだと……
そう改めて決心した、冬の夜だった。
*****
「やっぱり信長様に似てるよな」
「そうかな…目は赤いけど、顔の作りは美依ですよ、政宗さん」
「ほーら六花、にこってしてみろ、にこー」
「秀吉…お前は六花の爺か何かか?」
「ふふっ、秀吉様は六花姫が可愛くて仕方ないのですよ、光秀様」
(……騒がしい奴らだ、まったく)
それから月日が過ぎ……
少しだけ暖かくなった弥生の大安。
六花の初宮参りのために訪れた神社で、美依と六花は武将達に囲まれていた。
この日が六花の顔見せの場だった事もあり、武将達は六花を見てはああでもない、こうでもないと騒ぎ立てる始末。
美依が具合が悪かったせいもあり、武将達も六花への面会を避けていたから……
だからここぞとばかりに騒ぐのも、無理はない。
皆、嬉しい気持ちが高ぶっているからだと解るし……
それは美依もありがたいのだろう。
終始笑顔で、皆に囲まれている。
「ほら、六花。秀吉おじちゃんだよー」
「美依、おじちゃんはないだろ……」
「えー、一番猫っ可愛がりしてるから」
美依もあの夜から、みるみる体調を戻して。
やはり精神的に病んでいたのが原因だったのだと…それを改めて実感した。