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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第92章 君が傍にいるだけで《後編》❀織田信長❀





「美依と子の為に、見守るだけでは駄目だ。もっと…夫として父として、やらねばならん事がある」

「信長様……」




言葉を失う秀吉を後目に、鍋に野菜を放り込んで、火加減を見る。

書物でそれなりには学んだ。
しかし上手く出来るかは別だ、それでもやる事に意義があると俺は思う。

秀吉はしばらく絶句していたが……
やがて、俺の隣に歩み寄ると、とても頼もしい笑みを見せた。



「手伝います、信長様」

「秀吉……」




その顔は、俺への忠義と言うよりは、美依を心配する兄貴分としての表情に見えた。

本当に美依は周りからも愛されているな。
だからこそ…早く元気にならねば。



「そうか、頼む。ならば、そこにある鮭を炙れ、焦がさぬようにな」

「はっ、かしこまりました!」

「その前にたすき掛けをしてこい、袖が燃える」

「あ、それはそうですね」




こうして、秀吉の手伝いもあり、美依に食わせるための膳は完成した。

食べやすく、栄養のあるもの。
それを美依の部屋に運びながら……
一体、どんな顔をするだろうと。
それを思えば、少しだけ頬が緩んだ。

こんな事をしてやりたいと思うのは、貴様だけだ。

貴様だけが、俺の唯一の存在で。
それは子に対しての愛情とはまた違う。
貴様は…俺のたったひとりの妻だから。















────だから、早く笑え
花のように、また愛らしい笑顔で















「こ、これは……」




美依の部屋を訪れ、その膳を褥の横に置くと、美依は起き上がってびっくりしたように声を上げた。

俺はと言うと、椀に入った粥を匙で掬い、美依の口元へとそれを持っていく。

すると、美依は少し頬を赤らめ……
目をぱちくりとさせながら、俺に尋ねてきた。




「えーっと、信長様……?」

「食わせてやる、口を開けるがよい」

「食わせてやるって……」

「俺が作った飯を食えぬと申すか?」

「信長様が作ったんですか?!」

「そうだ、正確には秀吉とだがな」




それを言えば、美依はますます驚いたような顔つきになる。

俺が料理をするのが、そんなに珍しいか。
それとも、秀吉と作ったと言う事に驚いたのか?







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