〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第92章 君が傍にいるだけで《後編》❀織田信長❀
(俺には何か出来ぬものか……)
美依が辛いなら、夫である俺がしっかり手助けしてやらねば。
女中ばかりには任せていいのかと……
改めて己の成すべきことが問われているような気がする。
その日はそのまま美依を寝かしつけ、俺は部屋を後にしたのだが。
夫として、父親として。
何をすべきか、何をしてやれるのか。
それをひたすら己に問い続け……
そして、出た答え。
それは二人の人生を担う者として、身分や立場などは二の次だと言う結論になったのだが──……
*****
「信長様…何をしておられるのですか?!」
次の日の昼過ぎ。
俺の元にやってきた秀吉が、頓狂な声を上げた。
俺はチラリと一瞬だけ秀吉を見て…
また野菜を切る作業へと戻る。
まったくうるさい奴だ。
きっと女中の誰かから聞き、公務を放ったらかしてすっ飛んできたに違いない。
ここは台所だ。
台所でやる事と言えば…ひとつしかない。
俺は手に持った包丁を振るいながら、淡々とその質問に答えてやった。
「美依の飯を作っている」
「美依の飯?」
「ああ…あやつが食える、栄養のあるものを」
「しかし、女中に任せれば……」
「美依は俺の妻だ。女中ばかりに任せてはおけん、妻が具合が悪いのなら…夫である俺がなんとかしてやらねば」
美依も俺の作ったものなら食うかもしれない。
そんな期待も込めて、飯を作ろうと決めた。
俺は料理などはほとんどした事は無いが…
それでも、美依の為に何かしてやりたい。
(あのように弱っている姿は、見ていて辛い)
気がつけば、六花を産んでから、美依のはつらつとした愛らしい笑顔を見ていない気がする。
美依は俺の子を産んで、身体を壊した。
俺は美依と六花、二人の人生を背負う責任がある。
俺では六花に乳はやれない。
ならば、やれる事を出来るだけやってやらねば。
子育ては夫婦でするものだ。
そして、どちらかが倒れた時には支え合うのが夫婦だ。
それならば……
俺がこうして台所に立って、妻の飯を作るのは当たり前で。
周りが反対しようと関係ない。
これは、俺なりに考えて出した答えだ。