〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第92章 君が傍にいるだけで《後編》❀織田信長❀
「美依、具合はどうだ?」
六花が産まれて、十数日。
今日も俺は美依の部屋へ赴き、愛する妻を見舞っていた。
美依は出産してからというもの、体調を崩し、あまり具合が良くない。
本来ならば天主で生活させたいが……
天主には公務のために、家臣達も多く出入りする。
それ故に、美依もゆっくり静養出来ないかと思い、美依とは別の部屋で生活をしていた。
美依の身の回りの世話は、女中に任せているという理由もあり…
俺は公務の合間を見ては、美依の部屋を訪れ、様子を見る毎日だ。
「信長様……」
すると、美依が褥から半身を起こしたので、俺は傍に座ってそれを支える。
美依は弱々しい笑顔を浮かべ……
俺にもたれ掛かって、一つ小さな息を吐いた。
「起きて平気か」
「はい、大丈夫ですよ」
「六花は乳母の元か」
「……はい、そろそろお乳の時間なので」
(……だいぶ、落ち込んでいるな)
美依は子供を産んだものの、乳の出が悪く、授乳は乳母に任せきりの日々が続いていた。
その事が、美依には辛いようで……
体調も悪いだろうが、気持ち的にも塞ぎ込んでしまっているように見える。
なんだか、とても痩せたし。
華奢な身体がもっと小さくなり、顔色も悪い。
俺は赤ん坊も心配だが……
どちらかと言うと、今の美依の状態の方が気がかりだった。
「貴様は飯は食したか」
「いえ、私は……」
「食欲がないのか?」
「あまり、食べたくないんです」
「だが、食わねば体力もつかん。言われただろう、出産で出血が多かった故に貧血気味になっていると」
「はい…解っております」
俺が言うと、美依はしょんぼりと俯いた。
多分身体の状態が良くないから、乳も出ないのだ。
それはそうだろう。
母親の栄養を削って、子に行くわけだから…母親自身が身体を整えねば子にまでは回らない。
六花の出産はだいぶ難産だったようだし。
身体がなかなか回復してこないのも、仕方ないとは思う。
だが…食わないのは駄目だ。
子がどうの以前の問題で、まずは美依がしっかり栄養を摂らねば。