〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第90章 菫色の指切り-貴方が教える×××-《後編》❀石田三成❀
「……っっ!!」
美依様は、絶句して私を見上げた。
信じられない、と言った目で。
私は本気ですよ、美依様。
貴女に反省していただくために…
貴女にはもっと羞恥を感じていただかなくては。
すると、見る間に美依様の瞳に涙が溜まり、それが筋になって零れ落ちる。
自慰するのですか?
それとも…懲りて反省するのですか?
美依様の行動を待っていると…
美依様は小さく俯き、ぽつりと。
呟くように、私に言った。
「三成君の悪口はだめなの」
「……」
「他の誰でもない、三成君だけは」
「……何故?」
「好きな、人、だから」
(え………?)
今、なんと言った?
好きな…人?
目を見開いた私に、言葉を続ける。
震える声で、その理由を。
────私が欲していた言ノ葉を
「好きな人の悪口は、どうしても許せなかった。私は三成君が好きだから。無茶して、怪我して、約束破って…私は馬鹿だと思う。でも、これだけは譲れない。三成君を悪く言う人は、絶対許せない──……!」
「───………っっ」
刹那。
一陣の風が心に吹いた気がした。
それは凄まじく、全てを薙ぎ払うように激しいのに…
何故か温かく、鮮やかで。
私の中の悩みなんて、あっという間に吹き飛ばした気がした。
(ああ、だから…貴女は)
心は繋がっていた。
私を想ってくださっているから…
貴女は無茶をし、頑に反省しないのですね。
男に歯向かって、怪我してまで…
私を守ってくださったのですね。
湧き上がる愛しさが、私を支配する。
滾る熱情が溢れ出して…
貴女をこんなに『好き』だと思う。
「……お馬鹿さんですね、貴女は」
私がふわりと躰を掻き抱くと、美依様は鼻をすすって私の肩に顔を埋めた。
愛しい貴女。
想いを伝えなければ、苦しくて死んでしまう。
だって、私も貴女が好きだ。
こんなにも、これほどまでにも。
何も手につかない。
貴女だけが心に住みつく。
気持ちの矢印は、貴女に向けられている。
でも、一方通行ではなかったのだ。