〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第90章 菫色の指切り-貴方が教える×××-《後編》❀石田三成❀
「私が何故、ここに来たか解りますか?」
「……」
「もちろん、怪我の心配もありましたが…貴女には、心当たりがある筈だ」
「……っ」
私が言うと、美依様は唇を一文字に結び、俯いて視線を褥に向ける。
秀吉様は言っていた。
美依様は男達と鉢合わせた時、私の悪口を言われて反論し…その流れで襲われたのだと。
そう、美依様から聞いたと言っていた。
その話を聞いて…
私は正直びっくりしたが、美依様の性格を考えたら、反論したのは当たり前なのかもしれないと思った。
誰だって、知り合いの悪口を言われたら、気分は良くないだろう。
正義感の強い美依様なら、言い返したりするのも当然なのかもしれない。
(でも、それをしない約束でしたよね?)
私は美依様に言った筈だ。
男達に食ってかかってはいけないと。
美依様のしたことは『無茶』だ。
無茶はしない事。
それが指切りの約束ではなかったのか?
「……ごめんなさい、約束破って」
すると、美依様はぽつりと。
消え入りそうな、小さな声で呟いた。
「三成君の悪口を言われて、我慢できなくて…つい」
「つい、ではないでしょう。秀吉様が助けてくれなければ、貴女は男達の手篭めにされていたかもしれないのですよ?」
「解ってる、でも……」
「でも、も違います。貴女は解っていない」
「……っ」
美依様の言葉を静かに遮れば、美依様はまだ納得いかないように口を噤む。
解っていない。
自分がどれだけ危険なことをしたのか。
そして──……
私がどれだけ
貴女を思って言ったことか
全然解っていない。
「あっ……!」
私が美依様の掛けている布団を乱暴に剥ぐと、美依様は驚いたように声を上げた。
姿を現した、美依様の下半身。
薄い着物から伸びた細い足首には、包帯が巻かれていたが…
私はそれを見ても躊躇いもせず、褥の下に移動すると、その片方の足首を掴んで掬い上げた。
「……っ、三成君?」
そして、美依様の戸惑ったような声を無視して…
上半身を折ると、その小さな足の甲に、唇を押し当てた。