〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第89章 菫色の指切り-貴方が教える×××-《前編》❀石田三成❀
「三成───………!」
その時だった。
書庫の扉が、勢いよく開かれて…
開かれた扉から姿を現したのは、焦ったような表情の私の主君だった。
あまり慌てることなどないお方なのに。
不思議に思った私は、目を丸くして首を傾げ、主君に問いかけた。
「秀吉様、どうなされたのですか…?」
「三成、美依が……!」
「美依様?」
どきり、と心ノ臓が嫌な音を立てる。
それを抑えるように、ぎゅっと胸の辺りを掴んだ。
なんだろう、何か悪い予感がする。
すると、秀吉様は真っ直ぐ私を見据えながら…
酷く言いにくそうにゆっくり言葉を紡いだ。
「────美依が男に襲われた」
「……っ!」
瞬間、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。
美依様が襲われた。
何故、何故?
そんな事になったんだ?
頭が真っ白になり…
そこには疑問符ばかりが浮かぶ。
「三成……」
「秀吉様、詳しく教えてください!」
「……っ」
思わず秀吉様に詰め寄ると、私の剣幕に秀吉様はびっくりしたように目を見開いた。
そして、秀吉様から語られた話。
それは──……
瞬時に私を凍りつかせ、同時に。
じりっ…と心の中に烈火の感情を植え付けた。
(美依様、貴女は──……)
私は解っていたのに。
あの方がいかに無鉄砲か。
それは真っ直ぐで、故に純で。
少し負けず嫌いで、正直者で。
そんな性格からくるものだと言う事も。
そんな貴女だから、私は惹かれた。
もう、心に留めておけない程。
貴女に惹かれて──……
そんな貴女が『そう』する事くらい、
容易く予想がついたのに。
『無茶はしない、約束ですよ?』
それでも約束をしましたよね、私達。
指切りをして…
あの日、小指を絡めて誓いましたよね。
その約束を違えたのですか?
美依様、貴女は。
私との約束を破り、そして。
私なんかの為に、
その身を危険に晒したのですか──……?