〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第89章 菫色の指切り-貴方が教える×××-《前編》❀石田三成❀
「なんかね、あの人達に絡まれてる女の子が居て、困ってるみたいだったから助けてあげたの。そしたら、今度は私に絡み始めて…」
「……なるほど」
「しつこいったらもう…いくら言っても聞いてくれないし、女の子には何も無かったから良かったけども」
(……美依様は案外無鉄砲ですね)
あのまま、私が通りかからなかったら、どうやってあの場を切り抜けるつもりだったのだろうか。
女性が絡まれて困っているのを見て、助けてあげたのは賞賛するけれど…
その標的が今度は自分になると。
それも解った上で助けなければ、自分が危険な目に合うという意味だ。
私は困ったように笑うと…
美依様の鼻先を人差し指で、ちょんっと突っついた。
「……っ三成君?」
「美依様、女性を庇った勇気は素晴らしいです。しかし…私が助けなければ、貴女はどうなっていました?」
「そ、それは……」
「勇敢なのは構いませんが、あの様に男達に食ってかかってはいけませんよ?助けを呼んだり、逃げるのも一つの勇気です」
「……」
「貴女も女性なのですから、何かあったら大変でしょう」
私が言い聞かせるように言うと、美依様は見る間にしょんぼりと顔を曇らせた。
しまった、強く言いすぎたかな?
そう思っていると、美依様は私の着物の袂を、ちょいっと引っ張って…
小さな声で『ごめんなさい』と言った。
「私、後先考えてなかった。助けなきゃって、それしか考えてなかった…本当にごめんなさい」
「はい、解ってくれれば良いですよ」
「うん、今度は絶対無茶はしない…」
「なら、約束しましょうか、美依様」
「え?」
不思議がる美依様に向かって、私は小指を立てて差し出した。
『指切り』という小指を絡める約束の仕方。
これは以前美依様に教えてもらったやり方だ。
『指切りげんまん、嘘ついたら──……』
指切りの約束を破ったなら『針千本飲ます』と言う、過激な『お仕置き』があるらしい。
本当に針千本は飲まなくても…
破った際には、それなりに何か用意しなくてはなりませんね?
私が考えを巡らせていると…
美依様はおずおずと、私の小指に細い小指を絡ませた。