〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第89章 菫色の指切り-貴方が教える×××-《前編》❀石田三成❀
「話は後で、今はこの場を切り抜けましょう」
「う、うんっ……」
「なんだてめぇ、離せっ!」
すると、腕を掴まれた男が真っ赤な顔をして怒鳴り声を上げてくる。
明らかにガラの悪い男達。
早々に追い払ってしまわねば…
私は一度男の手を離し、美依様自身も己の背中に隠した。
そして、男達を見据えながら、冷ややかに言葉を放つ。
「痛い目を見たくなければ、このまま立ち去ってください。今回は見逃して差し上げます」
「な、なんだと…?!」
「失せろ、と言っているんです」
「なっ…この野郎、生意気な餓鬼が!」
……言葉を間違えたかもしれない。
男達は逆上し、腰に携えた刀を抜いて構えてきた。
(これは…こちらもやるしかありませんね)
私も男達と同様、柄に手を掛け、すらりと刀を抜く。
そして、それを構えながら、男達を観察した。
数的には不利だが…
その構え方を見れば、一発で解る。
多分武士でも何でもない、剣術など習ったこともないのだろう。
これなら…太刀筋も予想が出来る、と言うものだ。
「美依様、目を瞑っていてください」
「えっ……」
「すぐに終わらせますから…ね?」
「う、うんっ……」
そのまま、美依様は素直に目を閉じた。
そうやって、人の言う事を聞ける貴女は良い子ですね。
私は美依様が目を閉じたのを確認し、改めて男達に向けて刀を正眼に構え直した。
瞬間。
男達がじりっと、若干後ずさったのが解る。
私の醸し出す殺気に、怯えたのでしょうか?
しかし──……
美依様に害を与える存在を放ってはおけない。
『見逃す』と言った時に逃げなかった。
だからもう『痛い目』を見るのは必須です。
「さぁ…どこからでもどうぞ」
「…っ、生意気な……!」
「やっちまえっ!」
そのまさに悪者と言った台詞が合図になり、男達は一気に私に斬りかかってきた。
ギィンッッ!!
その刀を受け止めれば、刃物同士が擦れ合って鈍い金属音が鳴る。
私はそれを流し、次の一撃を受け止め…
確かに力はあるようだが、その太刀筋は荒く、不揃いで隙だらけだ。
そして、その癖さえ掴んでしまえば…
そう、次の一手を読むくらい、訳ないのだ。