〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第89章 菫色の指切り-貴方が教える×××-《前編》❀石田三成❀
『三成君』
その呼ぶ声は
いつしか私を虜にした
そして──……
『約束、ですよ?』
小指を絡めて交わした約束は
必然と私を『男』にした
ユ ビ キ リ
ゲ ン マ ン
嘘 ツ イ タ ナ ラ──……
*****
(あれ、あれは……)
菫色の花も野原に咲き乱れる、秋。
暑くもなく寒くもなく、清々しい晴れた日に…
その空気をぶち壊したのは、ある男達の怒声だった。
その日、私は市を訪れていて…
耳に届いた、その声に視線を向けてみれば。
大柄な男達二人を目の前に、一生懸命声を張り上げる小柄な女性の姿があった。
「あ、貴方達が勝手に絡んできたんじゃない!それを断って、何が悪いの?!」
「うるせぇ、大人しくついて来い!」
「そうすりゃ悪いようにはしねぇって」
「…っだから、お断りします!」
精一杯足を踏ん張り、男達を見上げる女性。
淡い鴇色に、華毬の柄の着物は…
私が見間違う筈がない。
その方は、いつも私の心にいる御姫様だから。
────美依様
行き交う人々が視線を送る中、男達に果敢に立ち向かっていて。
私が驚いて、思わず足を止めると…
その直後、男達の中の一人が美依様の細い腕をぐいっと掴み上げた。
「小生意気な女だな、さっさとこっち来い!」
「やっ…離してっ……!」
(これは、まずい)
頭の中で、瞬時に危険を察知する。
勝手に絡まれて、いちゃもんでもつけられたのかもしれない。
私は小走りでその騒ぎに近くと…
美依様の後ろから男の手を掴み、捻りあげると、空いた片手で美依様を自分の方に引き寄せた。
「そこまでですよ」
「……っ、三成君!」
美依様が驚いて、私に視線を向ける。
おや、瞳に涙が溜まっていますね?
よほど怖かったのかもしれないな。
私はにっこりと微笑んで…
美依様を安心させるように、肩に置いた手に力を込め、優しく声を紡いだ。