〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第88章 Dear…《後編》❀豊臣秀吉❀
「美依……」
「はぁっ…はぁっ…秀吉、さ……」
「声、我慢して偉かったぞ」
「……もうっ」
すると、美依は俺の下で躰をよじり、俺と真正面で向き合ってきた。
そして、俺の頬に手を添え…
軽く、ちゅっと音を立てて唇を啄んだ。
「……っ、美依……」
「本当に困った人。でも……」
「でも?」
「だーいすき、だよ」
(……っ、ほんと敵わねぇな)
向けられる花みたいな笑みが愛しくて。
次は俺から唇を奪った。
もちろん、啄むだけじゃ足りないのだけど。
久しぶりに美依を抱いた、熱い夜。
完全には恋仲の頃みたいにはいかなかった。
それでも──……
心は、まだ離れてはいなかったらしい。
少しだけ、想いの立ち位置がズレていただけだ。
またこうして愛し合って確かめよう。
俺は男で、お前は女で。
お互い必要な時もあるってこと。
多少は我慢するから。
たまには……ヤキモチくらい妬かせろ。
そう伝えたら、美依は困ったように笑った。
しょうがない人って思われたんだろうな。
でも…本音だから仕方がない。
お前を溺愛してるから。
真夏の暑さに負けないくらい──……
*****
「父様、ずるい〜お膝〜〜!」
御殿の縁側で、珠々が悔しそうに声を上げる。
俺は美依の膝に頭を乗せて寝転びながら、ふっふっと珠々に向かって不敵に笑って見せた。
「たまには父様も母様のお膝がいいんだ」
「ん〜っ!すずも母様のお膝がいい!」
「二人とも喧嘩しないー、母様のお膝は一つしかないんだからね」
美依が俺の頭の上から、呆れたように声を上げる。
それでも、どこか嬉しそうな声色に…
俺は少し安心して、縁側から見える空に視線を映した。
いつの間にか季節はすっかり秋。
天高く、庭の紅葉も色づいて、空気もめっきり涼しくなった。
あの夏の一件から…
俺達は少しだけ『俺達の時間』を作るようになった。
たまには二人で出かけたり、珠々を預けてめいっぱい愛し合ったり…
そうする事で、いい『立ち位置』を保ってる。
俺が馬鹿みたいに爆発して、美依を怒らせる事もなくなった。