〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第88章 Dear…《後編》❀豊臣秀吉❀
「こっ…の野郎っっ……!!」
「!!」
瞬間、頭の線がぶち切れた。
叫んで飛びかかったら、男が急いでこちらを振り返ってきて…
俺は男の肩を掴んで美依から引き剥がすと、その振り向いた顔に思いっきり拳を叩き込んでいた。
────ドゴォッッ!!
拳に感じた、鈍い感触。
その一発で男は見事にぶっ飛び…
地面にその身体が崩れたと思ったら、男はピクリとも動かなくなった。
「美依っ……!」
男が動かないのを確認し、改めて美依へと視線を向ければ、美依は上半身を起こし、涙目になってこちらを見ていた。
胸元が乱れた、浴衣姿。
口には手拭いを咥えさせられて…
俺は急いで美依に近付き、口元から手拭いを外してやると、力一杯その小さな身体を胸に掻き抱いた。
「…っ大丈夫か、美依っ…!」
「秀、吉、さっ……」
「来るのが遅くなっちまって悪かった、怖かっただろ?」
「秀吉さ、なんで…す、ずは……?」
「珠々が城に、危険を知らせにきたんだ」
「え……?」
「俺の所に来たんだよ」
美依を安心させるように背中を撫でながら、珠々が来て話した事を美依に話してやる。
すると、美依はそこでようやく安心したのか…
俺にしがみつき、声を上げて泣き始めた。
「怖かった…怖かったよぉ……!」
「うん、もう大丈夫だ」
「秀吉さ、秀吉さん……!」
「怖い思いをさせてごめんな、よしよし」
泣きじゃくる美依の背中を優しくさする。
その温もりにようやく息がつけて…
俺は安堵のため息を漏らしたのだった。
(良かった、美依……)
────その後
後から合流した政宗と三成に男を引渡し…
俺は美依を背負いながら、御殿へと帰った。
なんだか、美依を背中に乗せるのは久しぶりだな。
温もりを感じながら、そんな事を思った。
美依は大人しく俺の背中にひっつき、終始無言で。
ああ、昼間の事を謝らなくては。
そう思いながらも、俺も言葉が出なかった。