〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第88章 Dear…《後編》❀豊臣秀吉❀
「美依っ…美依ーーっっ!」
拝殿脇の御神木の所までくると、人はまばらで、さっきまでの賑やかさは無く、とても静かだった。
浴衣を着た男女が、声を張り上げる俺を、すれ違いざま目を丸くして見ていく。
だが…美依の姿は見当たらない。
怪しげな男の姿も無い。
この辺りにはもう居ないのか。
それとも人目につかない所に隠れているのか…
(くそっ、考えろ…もし俺だったとしたら)
頭を捻って、行きそうな場所を考える。
もし、仮に俺がそうだったとしたら。
誰にも見られないように、絶対人が来ない場所を選ぶ。
でも、声を上げられたら怪しまれるから、手ぬぐいか何かで口元を覆うとか…
そう考えただけで、ヒヤリと冷たい汗が背中を伝った。
美依は声を出せない状況かもしれない。
向こうから助けを呼べないならば、意地でもこちらから探し当ててやらねば……
頭に浮かんだ最悪な状況を振り払うように首を振り、だんだん人気のない場所に移動して美依の姿を探す。
そして、御神木から拝殿の裏に回った時だった。
────ガサッガサガサッ!!
(ん……?)
鎮守の森に差し掛かる所で、茂みが音を立てたのが解った。
見れば、風もないのに不自然に揺れていて。
黒々とした葉の動きに、なんだか違和感を覚えた。
「美依……?」
俺は足早に茂みに近寄り…
その鬱蒼とした中に、足を踏み入れる。
茂みを掻き分け、視線を泳がせ。
暗い中、目を凝らして見えたもの。
それは──……
「暴れんな、大人しくしろ!」
「んっ…んんんっ……!」
「誰も助けになんて来やしねぇよ!」
動く、二つの黒い影。
倒れた女に無遠慮に乗り上げる、大柄な男の間から…
ちらっと見え隠れしたのは、浅葱色の布。
美依の、
着物の、柄、
(美依…………っっ!!)