〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第87章 Dear…《前編》❀豊臣秀吉❀
「秀吉、お前美依と珠々と、三人で夏祭りに行ったんじゃなかったのか?」
「その予定だったんだが、急遽美依と珠々だけで行ったぞ。何かあったのか?」
「こんな時に…なんで一緒に行かねぇんだよ」
「……どーゆー意味だよ」
政宗の言葉に、俺は思わず首を傾げた。
政宗も三成も、眉間にシワを寄せて、なんだか苦々しい顔つきになっている。
それを不思議に思っていると…
三成が少し厳しい口調で、俺に説明をした。
「強姦魔が現れました、夏祭りに」
「え……?」
「女性が襲われたそうです。その方は殴られ、無理やり行為を強いられ…気絶しているところを発見されました。今から私と政宗様で手分けして夏祭りの警備に向かおうとしていたのですが…」
「……っ」
その話を聞き、背中に冷や汗が流れる。
『強姦』
それは性的暴行の事だ。
そんな行為をする危険な輩が現れたなんて。
今は美依と珠々、二人きり。
もし二人に何かあったら……
そんな事になったら、取り返しがつかない。
俺はぎゅっと拳を握ると、なるべく落ち着きを払ったように二人に告げた。
「今すぐ美依達と合流する」
「はい、その方が良いと私も思います」
「警備にあたれなくて悪いな、政宗、三成」
「仕方ねぇだろ、最愛の家族のが大事だからな」
政宗がふっと笑って、俺の肩を叩く。
一刻も早く、二人と合流せねば。
この暑さで頭がおかしくなった奴が現れたのだろう。
そんな奴に、大事な家族を奪われたりしたら…
拭いきれない不安が心を支配し始めた。
────その時だった
「父様ぁーー……」
不意に聞こえた聞き慣れた声に、俺は目を見開いた。
そして反射的に声をした方に振り向く。
すると…
そこには縫い上がったばかりの新品の浴衣を着た、小さな我が子が泣きながら立っていた。
「珠々っ!」
俺は急いで愛娘に駆け寄る。
すると、後から政宗と三成も追ってきた。
何故、珠々がここに居る?
美依と夏祭りに行ったのではないのか?
美依はどこに行った?
俺は珠々を抱き上げると…
涙に濡れた大きな瞳を見つめ、頭に浮かんだ疑問を小さな娘に問いかけた。