〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第87章 Dear…《前編》❀豊臣秀吉❀
「珠々、母様と夏祭りに行ったんじゃないのか」
「父様……」
「母様はどうした、なんで一人でここへ来た」
「うー…」
珠々は唸って、またぽろぽろと涙を零す。
俺は指で優しくその涙を拭いながら…
優しい声色で、もう一度珠々に問いかけた。
「ゆっくり話してみなさい、珠々」
「うっ、ううっ……」
「なんで一人でここへ来たんだ?」
美依とはぐれてしまったのか、それとも別に理由があるのか…
さっきの強姦魔の話もあるし。
ここに珠々が居るなら、美依は今一人と言う意味だから。
────でも、何か嫌な予感がする
すると、珠々は小さく頷いて。
俺の目を澄んだ瞳で見つめながら、たどたどしく説明し始めた。
「母様、お祭りで具合悪くなって、少し休みましょって座って休んでたの」
「美依が?それで?」
「そしたら、知らないお兄さんが話しかけてきて、母様休ませてあげるよってどっか連れて行っちゃって…」
「えっ……」
「お兄さんが先にお帰りって言うから、父様に会いに来たの。母様、大丈夫かな…」
(まさか……!)
「おい、それってまさか……!」
「ええ、政宗様。同じ事を私も思いました」
政宗と三成が口々言う中で、サーっと頭から血の気が引いた。
その『知らないお兄さん』とは、例の強姦魔ではないのか?
普通の人間なら、母親だけ休ませ、子供を夜に一人で帰すなんて事はしないだろう。
具合の悪い美依に狙いを付け、うまく子供と引き離して、その後は…
そこまで考え、ワナワナと唇が震えた。
もしかしたら、今頃……
美依…………!!
「政宗、珠々を頼む」
「おっと、秀吉……!」
俺は政宗に珠々を渡すと、一度珠々の頭を撫で、そのまま夏祭りの場所に向かって、一目散に駆け出した。
美依が具合が悪くなった。
それも心配だが、何より……
今一人で、知らない男に連れ去られ。
一体、何をされているのか。
それを考えるだけで、腸が煮えくり返るようだった。
美依、
傷つけられてたまるか。
俺の大切で、唯一で……
『秀吉さん』
温かく、
俺を導く、
輝ける星。