〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第87章 Dear…《前編》❀豊臣秀吉❀
(───………餓鬼だな、俺)
自分が情けなさすぎて、怒りを覚える。
こんな風に喧嘩したい訳ではなかった。
だが、剥き出しの嫉妬心は刃になり、美依を傷つけ、そしてすれ違いを生んだ。
ただ、少しだけ──……
俺を見て欲しかっただけなのに。
じりじりと蝕むように、焦がれる心が止まらない。
まだこんなに好きだ。
美依の事が。
それは子供が出来ても、年老いても…
決して冷めない熱なのだから。
でも──……美依は?
自分の気持ちを再確認しながらも、少し心が離れている感覚に、俺は空回りしているような寂しさを覚えた。
まだ二人とも同じ気持ちだと信じたい。
それでも……
いつしか俺達の立っている場所は変わってしまったのだと突きつけられたようで、ほろ苦い気持ちはなかなか消えてはくれなかった。
*****
────結局、俺は夏祭りには行かなかった
美依が俺を避けていたので、急遽登城する事になったと言うことにして。
珠々は残念がっていたけれど…
それでも、こんなみっともない感情のままでは、普通に接する事は無理だと思った。
夜になって、夏祭りへ向かう二人を見送り…
『嘘』を『本当』にするために、俺は安土城へと向かった。
実際、やる事なんてたくさんあるのだから。
城で何かしらやっていれば、気が紛れるかもしれない。
(あっちぃな…大丈夫か、二人とも)
手の甲で額の汗を拭う。
今夜は何故かやたらと暑い気がする。
夜だと言うのに蒸し暑いし、まとわりつくような暑さを肌に感じるし。
二人ともこの暑さで具合悪くなってなきゃいいが。
結局は二人の事を考えている自分がいる。
心配するくらいなら付いていけど言う話。
それでも、自分の我を通したい時だってあるのだ、俺にも。
「あれ…政宗と、三成?」
もやもやする気持ちを抱え、俺が安土城の城門まで来ると。
政宗と三成が険しい顔をして、話し合っているのが目に入った。
一体どうしたと言うのだろう。
俺がそのまま二人に近づき、声を掛けると…
俺に気づいた二人は目を見開き、政宗がびっくりしたように俺に言ってきた。