〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第87章 Dear…《前編》❀豊臣秀吉❀
「ん、世界一可愛い」
「わぁーいわぁーい!」
「そんなに楽しみか、夏祭り」
「楽しみ!だって父様と母様とすずで行くんだもん」
にこにこと純な笑顔を向けられ、俺も笑みを返した。
三人で夏祭りもほぼ定番だけど…
昔は美依と二人だったんだよなぁなんて。
それが遠い思い出になった気がして、なんだか少しだけ寂しくなった。
考えてみれば、珠々が生まれてから、一度も美依と二人きりで逢瀬をしていない。
たまには二人きりで出かけたり、その後思いっきり愛し合って二人だけの朝を迎えたり…
そんな恋仲の頃のような事をしたい。
もちろん子供がいるのだから、無理は承知だが。
(なんだろうな、親になってしばらく経つのに)
未だにそんな関係を求めるのは我儘だろうか。
たまには子供抜きで、二人で居たいなんて。
頭の中は父親になりきれていない証拠なのだろうか?
「珠々、母様と話があるから、少し向こうに行っててくれるか?」
「はぁーい」
俺が珠々を促すと、珠々は素直に手を挙げ返事をし、ぱたぱたと隣の部屋に走って行った。
本当にいい子に育って助かるな。
俺がそう思っていると…
美依が俺の傍にやって来て、そのまま正座すると、不思議そうに首を傾げて俺を見た。
「私に何か話があるの?」
「話って言うか…」
「うん」
思わず口ごもって後ろ頭を掻く。
美依は俺が話し出すのを待っているし…
こうなったら正直に話すのもありかもしれないな。
そんな考えが頭にふっと過ぎり…
俺は少し小さな声で、若干目を泳がせながら話し出した。
「…たまには二人で夏祭り、行かないか」
「え?」
「俺は、たまにはお前と二人きりで逢瀬がしたいなぁーって」
そう言ってチラリと美依を見てみれば、美依はびっくりしたように、その丸い目を見開いている。
……そんなに驚く事か?
お前はそんな風には考えないのか?
その美依の反応に少しばかり不服を感じていると、美依は今度は目を釣り上げ。
若干怒ったような口調で、俺に反論してきた。