〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第87章 Dear…《前編》❀豊臣秀吉❀
星の数のめぐり逢いの中で、
気がつけば、お前が傍に居た。
その奇跡は幸せの連鎖を生み、
今の俺の生を支えている。
美依と、
そして…もう一人。
お前達が俺を照らしてくれるから
俺はいつも正しい道を歩いて行ける。
ただ──……
もう少し欲を言わせてもらえば。
いつになっても俺は一人の男で、
美依、お前は一人の女と言うことだ。
その意味が解るか?
お前は『唯一』の女だから。
それはいつになっても変わらない。
お前をいつだって愛していたいんだ。
美依、いつまでも
俺の一番近くにいてくれ。
誰でもない、お前が一番傍に。
それが、俺のわがままだったとしても…
それが俺の揺るぎない『立ち位置』なのだから。
「すずー、似合う似合う!」
「お祭りたのしみだねー、母様!」
「本当に楽しみだね、新しい浴衣だしね」
(…すっかり母親も板についたな、美依)
俺が文机で書簡の整理をしている横で、美依と小さな我が娘が楽しそうに声を上げる。
どうやら、今夜の夏祭りに着ていく新しい浴衣を、試着しているらしい。
そんな二人の姿を見ながら…
俺は思わず頬を緩めて、小さく息をついた。
美依が正式に豊臣家に嫁いだのは五年前。
それから、すぐに子を宿し…
十月十日経って、我が子がこの世に誕生してから、早四年。
美依そっくりの愛娘『珠々(すず)』は、わがままも言わず、素直にすくすくと育った。
顔の作りは美依そっくりでも、髪色や瞳の色は明るい榛(はしばみ)色。
やはり俺と美依を半分ずつ受け継いで生まれてきたのだなと、それを思うと嬉しくなる。
「父様〜、すずのお着物どうどう?」
と、珠々がぱたぱたと駆けて、俺の傍にやってきた。
俺が座っていると、珠々は俺と目線の高さがほぼ一緒である。
(随分大きくなったもんだ)
俺は頭のてっぺんからつま先まで、珠々を満遍なく見ると……
腕を伸ばして、その小さな頭をぽんと撫でた。
そして、優しい声色でその『感想』を言ってやる。