〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第86章 純愛イノセンス《後編》❀徳川家康❀
俺は美依に名前を呼ばれたような感覚を覚え、ゆっくりと唇を離した。
そのまま、そっと目を開ける。
そこで、目に映ったのは──……
「家康…」
(あ……)
先程とは違う、姿。
ほんのり染まった頬はそのままでも、ずっとずっと大人びた…
そう、それは紛れも無く。
俺の愛した『いつもの美依』の姿だった。
「美依…」
「あれ、私、あれっ…?」
「…っ」
「わっ、家康…?」
俺は言葉に詰まり、思わず美依の身体を掻き抱いた。
柔らかく、身体に馴染む感触。
幼い美依とは違う、もっともっと俺に近い…
いつもこの身に感じていた、等身大の温もり。
「もう、あんたは本当に世話ばかりかかる」
「家康…」
「でも…おかえり、あんたに会いたかった」
「……」
「会いたかったよ、美依」
まるで夢を見ていたようだったと、
美依そうポツリと言葉を漏らした。
俺にしてみたら…
幼い美依と過ごした僅かな時間は、色濃く忘れられない時間となった。
その目で確かめなさい
どれだけ、貴方が彼女に愛されているか
彼女だけが『光』ではない、
貴方も彼女の『光』である事を
貴方達は惹かれ合うべくして惹かれ合った
唯一の存在である事を
その身で実感するのです
あの夢の意味をやっと理解したよ。
俺達はきっとお互いを照らして輝いてる。
俺が幼い彼女に惹かれ、
また、彼女も俺に惹かれたように。
きっとどんな姿で会っても、
そうなる事は必然だったんだ。
幼いあんたがくれた言葉は、
確かに俺の心に刻まれたよ。
だから、今度は俺にお返しをさせて?
あんたの望みを叶えたい。
不安はあんた自身が拭ってくれたから。
もう、臆病になったりしない。
純粋な熱を、滾る熱情を。
あんたに伝えるまで、離さないから。
川から涼やかな風がそよぐ。
木陰で抱き合う俺達の姿は濃い影を映し…
『魔法』が解けた穏やかな時間の訪れだった。
もう一度、唇を重ねてみれば…
もっと満ち足りた幸福感に包まれて。
その温もりに鮮やかな気持ちが混じって、
極彩色の世界を見た気がした。
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