〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第86章 純愛イノセンス《後編》❀徳川家康❀
「ありがとう、美依」
「家康さま……」
「あんたの初恋になれて嬉しい」
「ほんと……?」
「うん、それにね」
間近で瞳を覗き、ふふっと笑う。
その黒い瞳には幸せそうな自分の顔が写っていて…
ああ、この子が俺に勇気をくれたと。
だからこんな風に笑えるんだと…
改めて再認識させられた。
「俺もあんたのこと、好きだよ」
「え、本当に……?!」
「うん、でも俺はやっぱりいつもの美依がいい」
「え?あっ……」
そのまま片腕で腰を引き寄せ、反対の手で美依の顎に手を掛ける。
くいっと掬い上げれば、美依は目を丸くして…
でも何をされるか解っているのか、こくっと小さく喉を鳴らした。
「……何されるか、解る?」
「家康、さ……」
「こういう愛情表現、あんたになら…していいよ」
「……っ」
「目、瞑って」
俺がそう言うと、美依は頬を染めながらゆっくり目を閉じる。
少しだけ、身体が震えて…
そんな初心な反応が可愛く、この子が本当に愛しいと思った。
初めての恋心をくれた、俺の大切な子。
でも…これからは『幸せのその先』を。
一緒に、あんたと見たいから。
(────戻って、美依)
俺はそのまま、そっと唇を重ねた。
まるで願いを込めるように…
次第に深くなる口づけは、吐息もとろりと絡んでいく。
その柔らかい感触を堪能するように、俺もふわりと目を閉じた。
美依、
美依、
ありがとう。
俺に気持ちをくれて、ありがとう。
俺があんたに惹かれたように、
あんたも俺に惹かれてくれたんだね。
それは『運命』だと…
そう思ってもいいのかもしれない。
俺はもう迷わない。
あんたと幸せの先を見る事を。
未来を見据えて、
あんたとさらに幸せになる事を。
────愛してる、美依
『家康────…………』