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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第86章 純愛イノセンス《後編》❀徳川家康❀





「ちょっ…あんまり川の中の方まで入っちゃだめだよ?」




小さな背中に声を掛けたが、聞いてるんだか聞いてないんだか。

小さくため息をつくと…
俺はその髪に触れた手に、視線を降ろした。

美依と同じ手触りだったな。
当たり前じゃないか、だってあれは美依なんだぞ?

細い髪が指をすり抜ける瞬間は、あれを子供だとは思えなかったと…

少しだけ逸る鼓動に、その手を握り締めながら、また軽くため息が漏れたのだった。















*****















「わっ…お魚がいるっ、綺麗〜!」




(…こうしてると普通なんだけどな、美依)


美依が水に足を浸けながら、はしゃいだ声を上げる。
俺は少し離れた場所で美依を見ながら、これまでの事を頭の中で思い出していた。

十二になった美依。
子どもっぽく、初恋もまだで、政宗さんに構われて赤くなって。

そんな美依でも、俺の不安を拭い、一筋の光をくれた。



『考えても解んない事不安になるなら、幸せがいっぱい待ってるはずって思った方がいい』



この先の見えない乱世で、なんて楽観的で安直な意見なのだろう。

でも…
そんな純粋で天真爛漫な彼女の意見は、確かに俺の心に突き刺さった。






────……美依はきっと
それを俺に教えるために小さくなったんだ







「結構冷たいな〜、気持ちいいー!」



川で無邪気にはしゃぐ美依。
俺と離れていれば、いつものような子供っぽいあの子。

惹かれているのは確かだ。
でも……
俺はやっぱりいつもの美依がいい。

今は、早くいつものあの子に会いたい。
会って、ごめんと伝えて…
『今以上の幸せ』を掴もうと伝えたい。

もちろん小さな美依も可愛いけれど…
『家康』って呼ばれる方が、俺は嬉しい。




(……複雑な気持ちだな、なんか)




どんな姿でも、やっぱり惹かれる運命にあるのか。

それは実感しているけれど…
美依も同じ気持ちならいいのに。

多少のやるせなさを感じ小さく息をついた。
その時だった。







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