〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第85章 純愛イノセンス《中編》❀徳川家康❀
「楽しく過ごしても不安に過ごしても一緒なら、絶対楽しいって思った方が幸せだよ。考えても解んない事不安になるなら、幸せがいっぱい待ってるはず!って思った方がいいじゃない。その方がこれから来る時間がワクワクして楽しみでしょ?好きな人と居て…絶対不幸になんてならないんだから」
(………っ)
────瞬間
俺の暗い闇に、一筋光が差した気がした
目から鱗とはこの事か
人の時間は有限で、先なんか誰にも解らない
前向きに過ごそうが、不安に過ごそうが
同じように時間は過ぎて、いつかは老いる
それならば──……
未来は幾分か光があるのだと
幸せに満ちているのだと
そう信じるのは自分の勝手でも
己自身の力になるのではないだろうか?
好きな人と居て
絶対不幸になんてならない
『幸せになりたくない』訳じゃない。
美依と居て、死ぬほど幸せで。
もし愛し合った結晶となったなら…
それは、とても幸せな事なのだから。
────この先に幸せが待っていると
そう思えば、楽しみに待つ時間すら幸せだ
「わっ…家康、さま……?」
俺がふわりとその小さな身体を掻き抱くと、美依はびっくりしたような声を上げた。
その抱き締めた身体、知っているものより、もっと小さい。
それでも──……
この子は想像を遥かに越えた、大きな世界を持っているんだな。
それを思ったら、なんか嬉しくて…
同時に、すごく愛しいと、そう思った。
「ありがとう、美依」
「あ……」
「あんたの言葉で、救われた」
「……っ」
「美依?」
耳元で囁くのを止め、少し身体を離して美依の顔を伺うと、美依は真っ赤に頬を染めて俺を見つめてきた。
少し潤んだような、熱っぽい眼差し。
それは幼い少女が『女』になった瞬間を見たようで、ドキリと心臓が跳ね上がる。
「家康、さまっ……」
「……っ、なに?」
「な、なんでもない。けど……」
「……うん」
「もう少し、こうしてたいな」
ふわりと美依の細い腕が背中に回る。
その瞬間──……
『二人の立ち位置』今までとは違うものになったと。
直感的にそれを察したのだ。