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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第85章 純愛イノセンス《中編》❀徳川家康❀





「────ねぇ、美依」

「うん?」

「俺、迷ってるんだ」




仰向けになり、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
まるで、自分に言い聞かせ、再確認するように。

こんな話を、今の美依にしても仕方ないのに。




「俺は幸せの絶頂にいると思ってたんだけど…どうやらその先にも幸せがあるかもしれなくて」

「そうなの?」

「そう、俺の大好きな子はそれを望んでる。俺も出来ればそうしてあげたいけど…俺は不安なんだ」




未知なる世界を見る事。
幸せの先を見る勇気。

一歩踏み出せないのは、まだ俺が弱いせいなのか。

誰よりも強くなりたいと願った。
でも『それ』と『これ』は意味が違う。




変に臆病になっている己自身
それは──……
『幸せになりたくない』訳ではないのに












「今以上に幸せになる事なんて望んでいなかった、だから…その先を見い出せるのか、俺には解らない。例えそうなったとしても、俺は今以上にそれを愛せるのか。だって今が幸せすぎるから…それ以上なんて、まだ見えない。それはやっぱり、俺が臆病なのかな」












「家康さま……」




(あ……)

気がつけば、幼い美依が少しびっくりしたように、零れそうな大きな瞳を、さらに見開いて俺を見ていた。

しまった、つい。
こんな話をされても、何の事か解らないだろう。

話だって抽象的すぎるし。
だいたいこの子に答えを求める事自体、間違っているのだ。




「ごめん、今の話はなんでもない」

「家康さま……」

「ごめん」

「私、思うんだけど……」




すると、美依は穏やかな顔つきになった。
それは『今の美依』を彷彿させるような、柔らかい表情で…

少し大人びたような優しい口調で、その桜色の唇から語りだした。




「先なんか誰にも解んないんだからさ、それを気にする時間って勿体ないなぁって」

「え……?」

「しかも、人の時間って有限でしょ?楽しく過ごしたって不安に過ごしたって同じように時間って過ぎる訳じゃない」

「……」

「だから、私思うよ」





それは純粋な子供の言葉なのか。
それとも……
純粋が故に、全てを悟っているのか。





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