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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第85章 純愛イノセンス《中編》❀徳川家康❀





「政宗さんを好きになりそう?」

「…多分、ならない」

「なんで?」

「私の好みじゃないかなー」

「ぷっ…そうなんだ」




好みじゃないとか言われてるぞ、政宗さん。
あんなに女に好かれる要素を持った人が、たった十二の子供に好みじゃないと。

あんまり可笑しくて、思わず口を手で塞いで笑いを堪えていると、美依は瞳をきらきらさせながら、俺に無邪気に尋ねてきた。




「家康さまは、好きな人いないの?」

「えっ……」

「家康さまの話を聞きたいな」




(……あんたが俺の奥さんなんだけどね?)

思わず口から零れそうになった言葉を堪える。
しかも、そんな無邪気に聞かれたら…答えないわけにはいかないんだけど。

俺はふぅ…と一回息をつくと。
幼い美依を見ながら、どこか少し懐かしむように答えた。




「……いるよ、好きな人」

「そうなの?!どんな人?!」

「……そうだね」




どんな人と聞かれ、美依を頭に思い浮かべる。
美依は優しくて、可愛くて、素直だし…
ちょっと意地っ張りなとこもあるけど、芯が強くて、前向きで、なによりも笑顔が眩しい。

挙げれば、キリがないくらい。
言葉で表すのが難しいな……と思っていたら、口元には自然に笑みが浮かんでいた。




「とにかく可愛い人、かな」

「えー、会ってみたい!」

「それは絶対無理」

「なんでー?!会わせて!」

「絶対無理だから、だめ」

「いーじゃない、家康さまのケチ!」

「美依の駄々っ子」









(……あ)










なんだか懐かしいやり取りに、ぎゅうっと心臓が締めつけられた。

こんなやり取りを前にもした。
それは美依と想いが通じ合った時。
あの時の美依もすごく可愛くて…
俺は二度と離さないって思ったんだ。





(やっぱり、あんたは美依なんだね)






────私、結構辛いんだ






そして蘇る一昨日前の記憶。
あの少し悲しげな声。
俺が美依に応えてやれないばかりに、辛い思いをさせていた事。

俺はあんたと幸せの先を踏み出す自信がないんだ。

心の中で燻る気持ち。
俺は何故か──……
今目の前に居る幼い子に、自分の気持ちを漏らしていた。







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