〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第85章 純愛イノセンス《中編》❀徳川家康❀
「家康さまー、一緒に寝よ!」
その日の夜遅く。
自室で書簡を読む俺の元に、美依が訪ねてきた。
さすがに一緒の部屋はまずいだろう。
そう思って、美依には別の部屋を用意したのだが…
(一緒に寝よって…この子は本当に)
やっぱり少し幼いよなぁ。
そう思っていると、いいよとも言っていないのに、美依は部屋に入って来て、勝手に俺の褥に潜り込む。
そして布団から顔を出し、俺を促すように、隣をぽんぽんと小さな手で叩いた。
「ほら、家康さま早くっ」
「俺はこれが読み終わったら寝るから」
「一緒に寝よーよー、ほらほら!」
「……解ったよ、全くもう」
美依には幼かろうが何だろうが、ほんと敵わないな。
俺は観念して書簡を閉じると、そのまま美依がいる褥に横たわった。
身体を横向きにし、美依を見れば…
間近で嬉しそうにニコニコ笑う顔が、行燈の光に照らされて淡く光っていた。
「…なに、そんなに嬉しいの?」
「嬉しい、こーゆーのって楽しいよね!」
「……そうだね」
こう嬉しそうに可愛く言われては、同意するしかない。
俺は幼女趣味はないんだけどな。
でも美依だからか、この子もすごく可愛く見える。
しかし──……
こうして平気で『一緒に寝よう』とか言ってくるあたり、男としては見られてないんだよな、と少し複雑になる。
幼くても、もう十二だろう?
政宗さんにはあんなに真っ赤になってたくせに…
(……なんだこれ、嫉妬みたいな)
「……ねぇ、美依」
「なーに?」
「政宗さんをどう思う?」
何を気にして聞いてるんだ、まったく。
自分に呆れながらも率直に美依に聞いてみれば、美依はきょとんとした表情をして。
やがて、若干険しそうに眉を寄せた。
「面白いお兄さんだけど危険な匂いがする」
「危険な匂い?」
「本能的にあまり近づくなって感じるの!」
「ぷっ……」
その答えを聞き、俺は思わず吹き出した。
哀れ政宗さん、がっつきすぎたのが敗因だな。
『女の勘』とやらが働いているらしい。
ちょっと面白くなり、俺は美依の顔を覗き込むと、さらに質問をぶつけてみた。