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〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀

第84章 純愛イノセンス《前編》❀徳川家康❀





「家臣にはあんたに変な事言わないように言っておく。だから、そんなに気張らなくてもいいよ」

「で、でも…!」

「俺は正直、まだ子供は要らないと思うから」

「え…」

「俺は、あんたが居れば幸せ。それ以上なんて…今はまだ解らないから」




敢えて、思っている事をそのまま伝える。
俺にとっては、それが今の現実で…

それ以外は考えられない、と思うからだ。



「美依…?」



すると、縁側からすくっと立ち上がり、無言で閨に戻り始めた。

なんか変な事を言ってしまったか。
何故か背中が怒っているように見えて、俺は焦って美依を追いかける。

思わず肩を掴んで、美依を引き止めると。
美依は振り返りもせず、弱々しい声で言ってきた。




「家康の気持ちはよく解った。ごめんね、一人で焦ったりして」

「美依…」

「家康がそういう気持ちなら、子供なんて出来ないよね。こういうのって気持ちも大事だし」

「…俺は」

「家康を責めてるんじゃないよ。でも…」















────私、結構辛いんだ















俺はそれ以上、何も言えなかった。
閨に戻っても、いつもは腕枕をして寝るのに、美依は俺に背を向けて眠ってしまった。



(ごめん、美依…)



美依の小さな背中を見ながら、小さくため息をつく。

案外美依は思い詰めていたのだと。
それを改めて感じて、少し心が痛んだ。

でも、俺の考えも変わらない。
美依が大事で、一番好きで…
もし子供が出来たとしても、俺は美依以上にその子を愛せるのだろうか。



そう言えば、美依自身は小さい頃、どんな子供だったんだろ?



ふと、横に逸れた考えが頭に浮かんだ。
俺は小さい頃なんて、思い出したくもないが…
美依はきっと素直な可愛い子だったに違いない。

そして、少し成長すれば…
初恋をしたりして、初めて誰かを想って。
そんな美依はまた可愛いに決まってる。



(……なんだこれ、少し面白くないな)



美依が誰かを想う。
それを想像したら、やたら腹が立った。
俺以外の男を想うなんで、ちょっと…いや、かなり気に食わない。







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