〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第83章 琥珀に滲んだ秘密の想い《後編》❀明智光秀❀
「あの、昼間はありがとうございました」
「ん?」
「お母さんにああ言ってくれて、すごく嬉しかったです。私だけじゃ、説得出来なかったと思うし」
「俺は当たり前の事をしたまでだ。あのくらい、礼を言われる事じゃない」
そのやたら男前の返答に、心がきゅんと疼く。
当たり前だって…
普通はあそこまで出来ないよ。
外で正座までして、説得してくれて。
『美依さんの存在は、私にとって光です。
その輝きを失わないように…
一生かけて見守っていきます』
(なんか…すごい事言ってもらっちゃった)
その時の言葉が頭で繰り返されて、今さらながら照れくさくなってしまった。
思わず、頬を染めて俯くと…
頭の上で光秀さんが笑ったのが聞こえ、頬に手を当てられたと思ったら、上を向かせられた。
「どうした、急に赤くなって」
「いえ…昼間の言葉を思い出しただけです」
「だから照れているのか、お前は本当に可愛い」
「……っ」
そのまま額に降ってきた口づけに、思わず息を詰める。
本当に…カッコ良すぎて困るな。
この人の恋人になれて、本当に嬉しい。
何より、私をすごく思ってくれているから。
すると、光秀さん唇を離し、間近で視線を絡めて…
真面目な様子で、私に問いかけてきた。
「────後悔はしないか」
「え?」
「せっかく帰って来れたのだろう?この世界に…心残りはないか」
(光秀さん……)
ああ、そんな心配までしてくれている。
この人は、一体どこまで優しいんだろう。
どこまで…私を好きにさせるのだろう。
でも、もう決めたから。
私は光秀さんをぎゅっと抱き締める。
その温もりを確かめるように…
優しいその人を、目一杯感じ取る。
「後悔なんてしません、絶対」
「美依……」
「お母さんにも許してもらえた。お別れも…出来ました。あとは、貴方のために花嫁衣裳を着るだけですよ」
「……そうか」
ゆっくり、光秀さんの腕が私の身体に回った。
そして、優しく優しく抱きすくめられる。
この人と、残りの人生を生きていくと決めた。
それは後悔しない自信があるよ。
時を駆けて掴んだ運命の恋。
私は──……
絶対絶対、離したりはしない。