〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第83章 琥珀に滲んだ秘密の想い《後編》❀明智光秀❀
「…とても遠くのご出身の方なのね」
「はい…ここから見れば、遥か遠い場所です。ですが、私の国は土地は肥え、水も綺麗な…とても良い国ですよ。何よりも、美依さんを快く迎えてくれる場所です」
「そう…ですか」
そのまま、お母さんは光秀さんに笑いかける。
泣き笑いみたいな表情で。
まるで安心したかのように、優しい顔で。
「こんなに想われて…美依は幸せ者ね。どうか、娘をよろしくお願いします。泣かせたら、承知しませんよ?」
(……っ、言葉が出ない)
光秀さんをお母さんに会わせて良かった。
私は心の底から、そう思った。
私が嫁ぐってことは、色んな人の思いが交差して、そんな中で起こった奇跡なのだと。
改めて、それを実感した。
きっと…いや、絶対幸せになるよ、私。
お母さんが心配しないように。
だから──……
今まで、育ててくれてありがとう。
感謝の気持ちは溢れて止まらない。
そして……
私は今日という日を、決して忘れない。
──……ありがとう、お母さん
*****
その夜遅く、私達はアパートに帰ってきた。
お母さんがどうしても…と言うので、夕飯を三人で食べてきたからだ。
お母さんは光秀さんがとても気に入ってしまったらしく、終始笑顔で光秀さんにあれこれ質問をしていたっけ。
(……すごく、楽しかったなぁ)
久しぶりにお母さんのご飯が食べられた。
光秀さんも楽しめてたならいいんだけど…
チラッと光秀さんを見てみれば、光秀さんは窓辺で涼んでいて。
私の視線に気がつくと、くすっと笑って口を開いた。
「どうした、美依」
「いえ、なんでもないです」
「お前のお母上は面白い方だな」
「え?」
「明智光秀と名乗ったら、やたら上機嫌だったぞ」
「あはは…!お母さん、歴史とか好きなので」
多分同姓同名の違う人、とか思ってるんだろう。
まさか本人だとは…普通信じないよね。
でも、こうして偉人の明智光秀が私をお嫁さんにしてくれて、挨拶までしに来てくれたんだよなぁ…
私は昼間の事を思いだし、光秀さんの傍まで寄ると、改めて頭を下げた。