〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第83章 琥珀に滲んだ秘密の想い《後編》❀明智光秀❀
────ねぇ、光秀さん?
もし、私達が出会ったのが乱世ではなく、平和な世の中だったら…
私達は当たり前のように普通の恋人として、デートをしたり、こんな風にキスをしたり。
そんな平凡な幸せを掴んでいたかな。
でもそれは、叶わぬ望み。
今こうしているのは、きっと夢みたいな奇跡だから。
だから、せめてもう少し、このままで。
私は光秀さんの口づけに溺れながら──……
儚い一時の幸せに、身も心も委ねたのだった。
*****
その後、私達は少し遅めのお昼ご飯を外で食べた。
公園のベンチに座り、買ってきたサンドイッチとコーヒーを広げる。
光秀さんは不思議そうサンドイッチを食べていたけれど…
光秀さんが言った次の一言に、私は思わずサンドイッチを落としかけた。
「えっ、私の両親に会いたい……?!」
私が驚いて目を見開くと、光秀さんはコーヒーを飲みながらゆっくり頷いた。
そして、何故かと理由を問うと。
それが、光秀さんの『やりたい事』の二つ目だと言う。
「俺はお前を嫁に貰う。ならば…今までお前を育ててきたお父上やお母上に承諾を得るのは当然だろう?」
「で、でもっ……!」
「お前との祝言が決まって…俺はずっと考えていた」
すると、光秀さんはふっと瞼を伏せ…
穏やかでも少し憂いを含んだような表情を見せた。
(あ、この顔……)
それは、祝言前夜の光秀さんの御殿で。
何かを言いかけて『ただの戯言だ』と言われた時の、あの表情と同じだと私は気がついた。
「俺がお前を嫁に貰うのは、お前をこの世界に帰さないと言う意味だ。それなのに、お前の両親に挨拶も出来ないと。それは筋が違うと解っていても…俺がお前の世界に行くなど無理に等しい。だから、色々諦めていた」
「光秀さん…」
「だがな、奇跡は起きた。もう二度とこのような奇跡は起きないと思うなら…俺は俺の役目を果たすのが道理だと。それは俺が一番望んだことだ」
その光秀さんの言葉が、心に染みる。
本当に私を想っていてくれるのだと…
そう思ったら、なんだか涙が零れそうになってしまった。
私の両親に挨拶したいなんて、それが役目だなんて。
貴方は、一体どこまで優しいんですか……?