〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第83章 琥珀に滲んだ秘密の想い《後編》❀明智光秀❀
「俺達が生きてきた乱世がどのように進んだのか。そして…俺は後世にどのように残っているのか。それが、知りたかった」
(えっ……)
光秀さんの言葉を聞いて、思わず目を見開く。
私の知ってる歴史なら、家康が江戸幕府を開いたことで、戦国時代は平和に治まるのだ。
そして…
明智光秀は本能寺の変を起こし、豊臣秀吉に討たれた。
そう、歴史上の明智光秀は『謀反人』。
そんな事を光秀さんが知ったら……!
「み、光秀さん、やっぱりやめませんか?」
「何故」
「そんな事知らなくても、光秀さんは立派な人ですよ」
「それはどうだろうな。汚れ仕事ばかりやってる身だ、案外逆賊として打ち首になってるかもしれん」
「そ、それは……!」
「どこにその書物はある?」
「み、光秀さん、待って……!」
そのまま光秀さんはスタスタと歩き出してしまったので、私は慌てて後を追いかけた。
光秀さんには歴史を知られたくない。
少なからず、ショックを受けると思うからだ。
でも──……
私があの時代にタイムスリップした事で、もしかしたら歴史が少し変わっているかもしれない。
現に本能寺で信長様を助けちゃってるし。
ああもう、どうしたらいいの?
頭の中でぐるぐると色んな考えがせめぎ合う。
それでも、光秀さんの後ろ姿を見ていたら…
とてもじゃないが教えられません、なんて言えなくなってしまった。
「このへん…かな?」
そのまま、光秀さんを歴史の本がある棚へと案内した。
そこから『安土桃山時代の歴史』と言う本を取って、光秀さんに手渡す。
「ありがとう」
「その、読めない字とかあったら言ってください」
「解った、そうしよう」
そう言って、光秀さんはゆっくり本を開いた。
なんだかいつになく真剣な眼差しで…
文字を追ってはページを開き、文字を追ってはページを開き。
私はと言うと、生きた心地がしなかった。
歴史、変わっていますように。
それだけが頭の中でリフレインする。
そうして、どのくらい時間が経っただろう。
光秀さんが息を小さくついた音がし、私が俯いていた顔を上げると…
光秀さんはなんだか優しい面持ちで、穏やかに口を開いた。