〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第83章 琥珀に滲んだ秘密の想い《後編》❀明智光秀❀
「図書館、と言ったか。どうやって行くんだ?」
「ここから歩いて30分…あ、四半刻くらいの場所にあるんですよ。ゆっくり行きましょう?」
「そうだな、そうしよう」
そう言って、光秀さんが大きな手を差し出す。
私がその手に自分の手を重ねると、光秀さんは優しく握り返してくれた。
そう、私達はいつもこうやって歩いてる。
お互いの手を取り合って、それは場所なんて関係ない。
────その一瞬が、宝物みたいに愛しい
光秀さんを見つめれば、その吸い込まれそうな瞳に、私が映っていた。
少しはにかんだような、照れたような。
光秀さんの瞳の中にいる私は…
なんだかとっても、幸せそうな顔をしていて。
ああ、こんな事態なのに、なんて顔してるの?
自分が自分で、ほんの少し呆れてしまったのだった。
*****
手を繋いで、歩いて30分。
市立図書館に着いて中に入ると、光秀さんは『これは凄いな…』と珍しく驚いたような表情を見せた。
二階建てのこの図書館は、市内でも一番大きな図書館だ。
私も本を借りに、たまに来ていたけど…
こうして久しぶりに来てみると、静かすぎるほど静かな館内の空気が、なんだかやたらと落ち着いた。
(それにしても、なんで図書館?)
光秀さんは『昔の事が解る書物』を望んでいる。
それの意図するところが…さっぱり解らない。
「あの、光秀さん。なんで本を探しに来たんですか?こっちで逢瀬するなら、もっと面白い所がいっぱいあるのに」
「そうだな。こうして五百年後の世界は非常に興味深い。どのような文明なのか…それを知りたい気持ちはある。ただ、な」
「ただ……?」
「俺はもしもと言う話は嫌いだが、もしも…お前がいた時代に来れたとしたなら、どうしてもやりたい事が二つあった」
「やりたい事?」
「そうだ」
すると、光秀さんはくすっと笑い…
目を細めて、どこか遠くをみるような瞳で、静かに言葉を紡いだ。