〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第82章 琥珀に滲んだ秘密の想い《前編》❀明智光秀❀
「ここ、私の部屋です……!」
「は?」
「私がいた時代の、私の部屋です」
「……」
「それって、つまりあの嵐はやっぱり…!」
困惑した表情の光秀さんを見つめ、光秀さんに説明する。
この時代から、戦乱の世に来た時も、同じような嵐だったこと。
そして、自分がタイムスリップした時と、まったく同じ感覚だったこと。
すると、光秀さんは目を見開き…
信じられないといったように、ぽつりと呟いた。
「それはつまり…お前の生きていた時代に、俺も飛んできてしまったということか?」
(なんて事だろう……)
口にされた言葉を聞いて、改めて実感が湧く。
あの夜の雷と、激しい雨。
あれはやっぱり、ワームホールが開く嵐だったんだ。
でも──……
何故、こんな事になってしまったんだろう。
明日は祝言で、幸せになる日だったのに。
こうして…現代に帰ってきてしまうなんて。
しかも、私だけじゃなく、光秀さんも一緒に。
「……」
光秀さんは無言のまま私を見つめ、そして部屋の中に視線を移した。
光秀さん…困惑してるよね、きっと。
だって見たことも無い場所、未来の世界。
それは光秀さん達が戦乱の世を生き抜いて、築いてきた結果としてある世界だ。
今、何を考え、思っているのだろう。
「光秀さん……?」
すると、光秀さんはすっと立ち上がり、ベッドの横にある写真立てを手に取った。
瞬きもせず、それを見つめ…
ふっと静かに目を細めた。
「この絵は…お前か?」
「え……?」
「お前ともう一人、描かれているな」
私も立ち上がり、光秀さんの傍に寄る。
そして手元の写真を見て、私も懐かしく目元を緩めた。
「私と、お母さんです」
「母君か……」
「学校を卒業する時に撮った写真です。あ、写真って言うのは現実の一瞬を、こうして絵みたいに残せる技術の事なんですよ。お母さん…今何してるかなぁ」
「……そうか」
光秀さんは写真立てをひっくり返したり、持ち上げて透かしてみたり、物珍しげに見ている。
大学を卒業する時にお母さんと撮った写真。
一人暮らしする時に離れてしまったから…
それ以来、お母さんには会えていないな。
その後、私は戦国時代にタイムスリップしてしまったしね。