〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第82章 琥珀に滲んだ秘密の想い《前編》❀明智光秀❀
『美依──……っ!』
遠くで光秀さんが、私の名前を呼んだのを最後に…
私の意識は、そこでぷっつり途絶えた。
白い光に飲み込まれて──……
それでも、この手は離すまいと、力を込めたのだけは覚えてる。
まるで光に溶けていくように。
私の意識も身体も、抗えない力に委ねるしかなく、その波に巻き込まれていったのだった。
*****
なんだか、優しい夢を見ていた気がする。
温かい、まるでお母さんの腕の中にいるような。
そんな柔い温もりに包まれて。
どこか懐かしい…声を聞いた気がする。
『────望み、叶えてあげましょう。
どうするかは…あなた達次第です』
────誰?
あなたは、誰だろう
ああ、なんだか私を呼ぶ声がする
起きなきゃ、私を待ってる
早く、起きなきゃ──……
「美依っ……」
必死に私を呼ぶ声が耳に届き、私は深い底から意識を浮上させた。
目を開けて、一番最初に目に飛び込んだのは。
白銀の髪、そして…不安に揺れる琥珀の瞳。
ああ、そこに居たんですね。
私は軽く瞬きをして…
私を見下ろす愛しい人の名を呼んだ。
「光秀さん…」
「気がついたか、具合はどうだ」
「あ、大丈夫です、よ?」
「そうか、ならいい」
まるで愛おしむかのように、額に口づけられる。
ああ、光秀さんは無事だったんだ。
あの光に飲まれて、意識が無くなって…
あれは一体何だったんだろう?
ぼんやりとする頭で考えを巡らせていると…
光秀さんが困惑したように、眉をひそめた。
「一体、ここはどこなんだ」
「え…?」
「雷が落ちたと思えば、奇妙な光に吸い込まれて…一体何がどうなったか、さっぱり解らない」
光秀さんに言われ、身体を起こして改めて自分の周りを見渡す。
そして、私は驚いて目を見開いた。
(え、ここは…!)
少し毛布が乱れたベッド。
壁にかかった、ベージュの上着。
家族の写真が入った、写真立て。
見間違うはずが無い。
ここは、私が『元々いた場所』
そう、現代の──……
私の部屋だったのだから。