〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第82章 琥珀に滲んだ秘密の想い《前編》❀明智光秀❀
「……心配だな」
「え?」
「お前と夫婦になる記念に植えた木があっただろう」
「あ、確かに…!」
「少し様子を見にいく、お前は部屋に戻っていろ」
「いえ、私も一緒に行きます!」
光秀さんがそう言って踵を返したので、私も慌てて追いかけた。
そして、不安な心を誤魔化すように、思わず光秀さんの着物の袖を掴む。
すると、光秀さんは不思議そうな顔をしたが…
やがて目を細め、袖を掴んだ手を優しく握り返してくれた。
(なんだろう、変に不安になる)
この嵐だからか、余計な事を考えてしまう。
今の私は幸せへ一直線の筈なのに。
不安に駆られて…堪らなくなる。
「大丈夫だ、美依。心配するな」
その時、光秀さんが振り返って私に言った。
優しい声色、私を安心させるように…
繋がれた手に、力が籠ったのが解った。
やっと、この人と結ばれる。
苦難を乗り越え、すれ違いを越えて…
やっと結び合えた、奇跡みたいな恋。
────この人を信じればいいだけなのに
何故か、不安は徐々に加速していく。
ジェットコースターみたいに、速く速く。
『もしかしたら』『いや、まさか』
そんな気持ちがせめぎ合って…
うるさい雷鳴とうるさい鼓動が、耳の中にこだましていく。
その、刹那の瞬間だった。
────ピカッ!ドオォォーーンッッ!!
「……っ!!」
突然、目の前に閃光が走り、辺りが真っ白になった。
続いて、ぐにゃり…と歪む視界。
音がどんどん遠ざかり……
まるでその『白』に飲み込まれるように、足元がふわふわしてくる。
(嘘、これっ……!)
この感覚には覚えがあった。
そう、まさにこの時代に飛ばされた時。
本能寺で、雷に打たれた…
あの、タイムスリップの瞬間。
「みつ、ひで、さっ……!」
必死に掠れた声で名前を呼ぶ。
繋がれた手は、そのままだ。
しかし、目の前に居るはずの光秀さんが見えない。
目の前が歪んで、真っ白になって。
手の温もりでしか、光秀さんが解らない。
私、またどこかに飛ばされてしまうの?
明日、やっと幸せになるのに…
光秀さんと、離れ離れになってしまうの?