〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第82章 琥珀に滲んだ秘密の想い《前編》❀明智光秀❀
「しかし…奇異な運命があったものだ」
すると、光秀さんが頭を撫でている手を滑らせ、髪を梳いた。
そのまま一房掬い、口づける。
その自然だけど、やたら色っぽい仕草に、心臓が思わずドキリと高鳴った。
「お前のような小娘を、嫁にもらう日が来るとは思わなかったぞ」
「なっ…!私だってまさか光秀さんが旦那さんになるとは、こっち来た頃は思わなかったです」
「おや、なら止めておくか?」
「それは嫌です、絶対」
「言い切るか…本当に俺の嫁は愛らしい」
光秀さんが髪から手を放し、優しい眼差しを向けてくる。
意地悪言っても、結局は私に甘い。
そんな優しいこの人が…死ぬほど好きだ。
そんな風に思って、笑みを返すと…
光秀さんはどこか少し愁いを含んだように、小さくため息をついた。
「だが、お前を嫁にするなら…いや、それは考えても無駄か」
「光秀さん?」
「何でもない。あまりに非現実すぎて…自分の考えに呆れている」
「え…?」
「気にするな、ただの戯言だ」
そう言って、また光秀さんはまた一回ぽんと頭を撫でる。
なんだろう、少し寂しそう。
あまり自分の感情を出さないこの人の、瞳が少し陰っている気がして…
少し理由を聞いてみようか。
そんな風に思った、直後──……
────ドドォォォーーンッッ!!
「きゃっ……!」
突然響いた轟音に、私は思わず耳を塞いだ。
今の、雷が落ちた音…?
あまりの大きな音に、ドキドキと心臓が早くなる。
「雷が、どこかに落ちたな」
「あ、やっぱり……?」
「だいぶ天気が荒れているからな…大丈夫か?」
「は、はい、びっくりしちゃって……」
光秀さんと二人で外を見ると、滝のように雨が降り、暗い空には閃光が走ってピカピカと光っていた。
だいぶ、雷が近づいてきたらしい。
明日は祝言なのに…大丈夫かな。
また不安が過ぎって、心が沈む。
でも──……
嵐を見ると、思い出す事がある。
それは、私がこの時代に飛ばされた時。
あのタイムスリップの夜も、こんな嵐だった。
(……まさかね、考えすぎ)
即座に自分の考えを否定する。
今更、そんな事があっては困るから。
そう、ワームホールが開くかも、なんて。