〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第79章 鴇色の君に酔わされて❀豊臣秀吉❀
「美依、俺本当は余裕なんてないんだ」
「え……?」
「お前の前だと、つい格好つける癖がついちまったけど…本当はそんな事、全然ない」
(秀吉さん……)
秀吉さんの口から出た言葉は…
とてもとても意外なものだった。
ふわふわとした口調で、なんだか自信なさげで。
もしかしたら、今の秀吉さんは私が思っているよりもずっとずっと酔っているのかもしれない。
「秀吉さん、酔ってる?」
「そうだな…だから言えるのかもな」
「……」
「美依、俺……」
秀吉さんがお酒に濡れた唇を開く。
そして、語られた『本音』は…
私の心をぎゅっと締め付け、甘く痺れさせるものだった。
「俺、お前を目の前にすると、自分が自分で居られなくなるんだ。他の男と話してるお前を見るだけで落ち着かなくなるし、さっきだって…」
「さっき……?」
「光秀がお前に触れただけで爆発しそうになった。あれは、俺だけに許された特権なのにって、馬鹿みたいに嫉妬した」
「……っ」
(そ、んな、素直に……)
秀吉さんの意外な言葉。
まるで独占欲みたいな…そんな秀吉さんは知らない。
いつも、何があっても大人に対処する人だ。
だから…嫉妬されたり、独占欲をぶつけられたり、そんなのは無縁だと思っていたのに。
「大人な俺なんて…そんなのはお前の前で格好つけたいだけなんだ。それに、俺は臆病だし」
「臆病って…秀吉さんが?」
「ああ、お前が好きすぎて、臆病になってる」
すると、秀吉さんは私の頬を手で包み込んだ。
それは熱く、固く骨ばった大きな手。
────でも、大好きな優しい手
「俺、お前をきちんと愛せてないだろ?」
「ひ、秀吉、さん…それは……」
「怖いんだ、俺のえげつない欲望で、お前を壊しちまうんじゃないかって…本当はお前をもっと愛してやりたいのに」
紡がれる、赤裸々な本音。
それはまるで、秀吉さんそのものみたいな。
優しく包むような、温かい心。
「お前が愛しすぎて、怖い。俺は男の欲に塗れた生き物だから…綺麗にお前を愛してやれない。きっと優しく出来ない。だから…お前を抱くのを躊躇うんだ、大切だから、お前をがっかりさせたくないんだ」