〖イケメン戦国〗新章 燃ゆる華恋の乱❀百華繚乱伝❀
第79章 鴇色の君に酔わされて❀豊臣秀吉❀
「秀吉さん、大丈夫?!」
「んー、美依……」
「しっかり…大丈夫?お水飲む?」
「美依、ごめん、俺……」
何か言いたげに、瞳が揺らぐ。
そのまま首が少し動き、お酒のせいで熱を孕んだその視線が、私のそれと絡み合った。
途端に、何かに縛られたように動けなくなる。
その熱っぽい瞳は、何かを求めているようで…
どきどきと心臓が高鳴り、緊張で口の中が乾いてくる。
「秀吉、さん……」
「美依、俺……」
「やれやれ、そこまでだ。秀吉、美依」
すると、側で見ていた信長様がパチンと扇子を閉じ、すっと立ち上がった。
そして、不敵に微笑み…
羽織りを翻して、広間から出ていく。
「続きは帰ってからやれ。家康、三成、秀吉が歩けぬようなら肩を貸してやれ」
「かしこまりました!」
「秀吉さん、大丈夫ですか?」
「おう…なんとか歩けるから平気だ」
そう言って立ち上がろうとする秀吉さんを、私も支えながら立ち上がった。
しっかり背中に手を回すと、秀吉さんも私の肩を抱くようにして寄りかかってきて。
自然と頼られていることが嬉しくて、若干頬を緩めると、目の前にいる光秀さんも立ち上がって、私にこそっと耳打ちしてきた。
「今、いい状態だ。これならすんなり本音を吐くだろう…聞いてみるといい」
「え?」
「お前が気になっている事だ。ただし…この勝負、俺は勝ったのだから報酬は貰うとしよう」
すると、光秀さんは素早く私の額に、ちゅっと口づけを落としてきた。
あまりに一瞬の出来事で呆気に取られ…
思わず目をぱちくりとさせると、もたれかかる秀吉さんが力なく声を荒らげた。
「光秀、てめっ…!」
「美依との一夜は我慢してやるのだから、妥当の報酬だろう?それともなんだ…嫉妬か、秀吉」
「え、嫉妬って…」
「…っ行くぞ、美依」
「う、うんっ……」
フラフラと歩き出す秀吉さんを支えながら、私も一緒に歩き出す。
後ろを振り返れば、政宗も家康も三成君も光秀さんも、さっき広間を出ていったはずの信長様も、みんな温かな眼差しで私達を見送ってくれていた。
そんな中で、私は光秀さんの一言が頭から離れなくて、秀吉さんの顔をそっと伺いながら思いを馳せる。